フィリピンにおける既知の医薬物質の特許性

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フィリピン知的財産法によると、医薬物質に関連して、以下に挙げるものは特許の対象ではなく、発明の進歩性を有しません。

  1. 既知の物質の新しい形態または新しい性質の単なる発見であって、当該物質の既知の効果を強化することにつながらないもの
  2. 既知の物質の新しい性質または新しい使用の単なる発見
  3. 既知のプロセスの単なる使用(ただしかかる既知のプロセスが少なくとも1つの新しい反応物を採用する新しい製品につながる場合は除く)

Tフィリピン知的財産法には、補足資料として、フィリピンの医薬物質の特許性を評価するための指針をまとめたもの (QUAMA ガイド) があります。

QUAMA ガイドは、特許可能な対象および発明の進歩性の評価時に「固有性の理論」の原則を適用することに注意する必要があります。これは、他の管轄区域では固有性の問題は新規性の評価時に考慮されるのとは対照的です。具体的には、フィリピンにおける固有性の理論は、クレームされた対象が「単なる発見」であり、従って特許の対象外であるかを最初に評価するために採用されています。先行技術の明示的な開示の結果として、必然的かつ不可避的に生じる当然の結果である対象は、固有性があり、単なる発見であるとみなされます。

クレームされた対象に特許適格性があるとみなされると、新規性および発明の進歩性の評価が進められます。固有性の原則は発明の進歩性の判断にも適用されます。

フィリピンで特許可能な対象を評価する際に固有性の理論が適用される、それぞれの状況をまとめたものを以下に示します。

(a) 既知の物質の新しい形態

QUAMAガイドによると、特許の対象となるには、既知の物質の新しい形態に固有性がなく、および、同じく固有性がない効果を強化することを示す必要があります。言い換えれば、強化された効果それ自体では不十分であり、強化された効果は想定外でなければなりません。

効果には、治療効果、または生物学的利用能、安定性、もしくは溶解性などの任意の優位な性質が挙げられます。強化された効果を示すデータは、明細書によって裏付けられる必要があります。

重要なこととして、熱力学的安定性の改善や吸湿性の低下は、多形体に帰属可能な既知の性質であり必然的かつ不可避的に得られるものであるとみなされ、特許の適格性には寄与しません。

(b) 既知の物質の新しい使用

特許性に関して以下の特徴にのみ依拠する既知の化合物の医薬用途クレームは、固有性があり、特許性がないとみなされます。

Medical use claims of a known compound which rely solely on the following features for patentability are considered inherent and unpatentable:

  1. 投与計画の新しい方法
  2. 新しい患者群
  3. 新しいメカニズムまたは技術的効果
  4. 既知の使用の新しい優位性
  5. 既知の治療に対する新しい臨床的状況

同様に、既知の化合物の新しい医薬用途は、この新しい用途が既知の医薬用途のより具体的な概念に向けられている場合、あるいはこの新しい用途が既知の物質に密接に関連する薬理学的効果から不可避的に得られるものである場合、固有性があり、単なる発見であるとみなされることになります。

(c) 既知のプロセスの使用

既知のプロセスは、新しい製品が生産され、1つの新しい反応物が採用されない限り、固有性があるとみなされます。先行技術で既知の製品が作られるプロセスが開示されているか否かを問わず、既知のプロセスから新しく発見された結果は、固有性があるとみなされます。

実務上のメモ

  • 既知の化合物の新しい形態は、固有性がなく、明細書でデータによって裏付けられている想定外な効果の強化をもたらすものでなければなりません。
  • 既知の化合物の新しい医薬用途は、新しい方法の投与計画、患者群、メカニズムまたは技術的効果、優位性、または特許性の臨床的状況にのみ依拠するものであってはなりません。
  • 既知のプロセスの使用においては、新しい反応物を採用し、新しい製品を生産する必要があります。

この記事は最初に2021年11月11日に英語で公開されました


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