ケーススタディ:中国特許実務における裏付け問題に対処した、後出しデータの成功例

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中国は以前、特許出願の審査時に補足データを後出し提出することについて、他の主要特許システムと比較してもより厳しい基準を適用していました。しかし、米国政府と中華人民共和国との最近の経済および貿易協定の調印により、中国国立知的財産管理局(CNIPA)は、特許審査のガイドラインに数回の改訂を行いました。その結果、現行の後出しデータ審査基準は、今は米国特許商標庁(USPTO)および欧州特許庁(EPO)との一貫性が高まり、グローバルな特許実務の調和において顕著に前進しました。

しかし、この前進は、進歩性および十分な開示(実施可能性など)に対処することを目的とする後出しデータに結び付けられています。中国国内実務において、裏付けに関する問題を扱う特定の規定はありません。後出しデータを用いて裏付けの問題に対処するのは困難であるというのが広く受け入れられている見方です。しかし、これにかかわらず、困難であっても必要ならば試してみることをお勧めします。ここで最近の成功例の概略をまとめます。

出願例は、PCT出願の中国国内移行出願であり、そこでは図面に示されていた化学構造に基づいて一般化された一般式を有する化合物の保護が求められていました。中国の審査官は、これらの化合物が実施例において略語で特定されているだけであり、それらの化学的同一性または化学構造を特定していないことを理由として裏付けに関する拒絶理由(すなわち、明細書によって裏付けられていない)を取り上げました。

この問題に対処するために、出願人は、図面に示されていた特定の化合物と実施例中で用いた略語との間の対応関係を明確にすることを目的として、出願例の優先権主張日後に発明者によって公開された論文を提出しました。しかし、この論文は、優先権主張日後に公開され、直接的な対応情報が記録として含まれていなかったため、審査官には受け入れられませんでした。

ここでこの出願例は行き詰まったように見えますが、実施例において略語が用いられたという理由だけで許可されないのは出願人に対して不当であると弊所では考えました。

よって、弊所は、さらに行動を起こしました。提出された論文が本出願と同じ主題を考察し同じ結果を得たこと、そして実施例中で用いた略語が図面に示したそれらの特定の化合物に実際に対応すること、を確証するための宣言書を提供するように出願人に要請しました。同時に、弊所は本出願によってなされる技術的貢献について審査官と議論しました。本出願において行なわれ、以前に提出された論文にも記録された広範な実験研究によって出願人が先行技術に多大な技術的貢献をしている、すなわち、癌治療に有効である有効化合物を提供していることを否定することはできません。特に中国特許法の第1条によって定められる「発明-創造を奨励する」精神を考慮すれば、そのような技術的貢献は、無視・無報酬であってはなりません。その後の考慮および審査官のチーム内の考察の末、審査官はこの出願例に特許を付与しました。

上記の例の中間手続から、後出しデータは特定の状況において、中国国内実務においても、しっかりした追加の裏付け分析と共に利用されれば裏付けの拒絶に対処するために役立つことが分ります。突き詰めていくと、特許システムの本質は、特許権を求める技術解決策開示と、出願人による技術的貢献と見合った特許権保護範囲との交換を含み、これは常に考慮されるべきです。

同じような問題に直面されている場合、弊所の専門家チームにご連絡いただければどのようにお手伝いできるかを提案させていただきます。

この記事は最初に2023年7月13日に英語で公開されました


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