競合製品の外観の様相を「借用する」取引業者に対する「救済(RESCUE)」の必要性

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Martin & Pleasance Pty Ltd v A Nelson & Co Ltd [2021] FCAFC 80の判例研究

Martin & Pleasance Pty Ltd v A Nelson & Co Ltd [2021] FCAFC 80 の最近の判決において、オーストラリア連邦裁判所の大法廷は、Martin&Pleasance Pty Ltd(および関連企業)(総称してMartin)が、「RestQ」ブランドの補完医薬品を販売、宣伝、およびまたは供給することを制限する暫定的差止命令を認めるという連邦裁判所の判決を支持しました。

背景

被告は、英国を拠点とする企業のグループであり、A Nelson & Co Ltdおよび関連企業(総称してNelson)です。同社は、1920年代と1930年代に、Edward Bach(エドワード・バッハ)博士によって最初に考案された「Rescue」ブランド下(Rescue製品)でさまざまな補完医薬品を製造しています。Rescue製品の範囲には、Rescue RemedyとRescue Pastilles(ストレス解消用)、Rescue SleepとRescue Sleep Spray(不眠用)、Rescue Plus(頭の冴えと平静を保つ用)が含まれていました。第二の被告であるBachFlower Remedies Limitedは、オーストラリアで登録されているRESCUEおよびRESCUE SLEEPの商標を、第5類の薬剤及び薬物を含む商品に対して有しています。

Martinは、薬局やスーパーマーケットなどのさまざまな小売経路を通じて、オーストラリアの小売市場でNelsonのRescue製品を30年以上にわたって販売していました。2020年10月、Nelsonは、販売契約の終了を求めました。2021年2月、Martinは独自にRestQブランドでRestQ Sleep Formula、RestQ Calm Formula、RestQ Focus Formula(総称してRestQ製品)などの、不眠症のための補完医療製品を発売しました。これらの製品は、エドワード・バッハ博士に関連する方法を使用して作られました。

Rescue製品とRestQ製品を比較するために、両製品を並べて以下に示します。

 

Nelson の Rescue 製品
 
Martin の RestQ 製品

一審判決

2021年3月、Nelsonは商標権侵害、詐称通用、およびオーストラリア消費者法の違反(誤解を招く詐欺的行為)に基づいてMartinに対する訴訟を開始し、RestQ製品の提供、販売、宣伝、および/または供給を含む特定の行為からMartinを制限する中間判決による救済を求めました。

一審判事は、Nelsonの詐称通用および誤解を招く詐欺的行為があったという主張は一応の証拠のある事件だと認定し、中間判決による救済を認めました。特に、一審判事は、NelsonがRescue製品において実質的な信用と評判を確立してきたことと共に、MartinのRestQ製品の「Get Up(外観の様相)」がNelsonの商品と十分に類似しているため、消費者が実際に混同するか、または実際に混同する可能性があることを認定しました。

一審判事は、Martinが提起した「善意」の抗弁にはさらなる審理が必要なことを鑑み、商標侵害の主張に基づいて中間救済の決定を下すことを拒否しました。別の理由で中間救済が命じられたため、裁判所が中間段階で商標侵害の問題を検討する必要もありませんでした。

一審判事は、さらに、当事者への相対的危害、公益および第三者への影響を含む要因を比較検討する際に、比較衡量(balance of convenience)は中間救済の認定を支持し、損害賠償の裁定は適切な救済策ではないと認定しました。

控訴

控訴では、2つの重要な問題に焦点が当てられました。それは、(a)一応の証拠のある事件が証明されたかどうか、また(b)比較衡量が中間救済の付与を支持したかどうかという点に関し、一審判事が自らの裁量権の行使において誤りを犯したかどうかです。

一応の証拠のある事件(Prima facie case

詐称通用および誤解を招く詐欺的行為が一応の証拠のある事件かどうかを判断する際に、Rescue製品とRestQ製品の外観とパッケージの比較(すなわち、競合する製品ラインの類似点と相違点の分析)において、一審判事が誤っているとMartinは主張しました。Martinは、一審判事の分析は「事実を誤解し、重要な検討事項を考慮していない」と主張しました1。しかしながら、大法廷は、Martinの提出意見において、一審判事の結論とは異なる結論を裏付けるために、比較の非類似性が類似性よりも重要視されている異なる分析を進めようとしていることを認めました。

一応の証拠のある事件を認める際、一審判事は以下に基づきパッケージの類似性を認めました。

  1. 「Rescue」と「RestQ」という名称の聴覚的な類似性、
  2. Nelsonのパッケージの一部にある「不眠を和らげるために昔から使用されてきた」というキャッチコピーとMartinのパッケージにある「心を落ち着かせて不眠を和らげるために昔から使用されてきた」というキャッチコピーの類似した使用、
  3. 両社の競合製品ラインともバック博士を参照する。

大法廷は、一審判事が一応の証拠のある事件だという結論に達する際に、競合するパッケージの類似点と非類似点を比較検討することに誤りはなかったと判示しました。重要点として、大法廷が強調したのは、評価と印象を問う場合、大法廷は一審判事の認定結果を覆す際に注意を払うべきであるということでした。

比較衡量((Balance of convenience)

比較衡量に関して、Martinの主な主張は、一審判事が暫定的差止命令を認めた場合のMartinと第三者、および公益に対する危害と、暫定的差止命令が認めなかった場合のNelsonへの危害を、適切に比較検討しなかったというものでした。大法廷はこれに同意せず、一審判事の理由は(問題の緊急性を考えると)簡潔であるが、競合する要素の必要な重み付けとバランスをとったことが見て取れると述べました。

Martinはまた、一審判事が一応の証拠のある事件の説得性を適切に評価しておらず、一応の証拠のある事件の説得性と比較衡量が関連する概念であることを認識していなかったと主張しました。これらの主張は両方とも、大法廷によって却下されました。特に、大法廷は一審判事がSamsung Electronics Co. Limited v Apple Inc. [2011] FCAFC 156の原則に従って、Nelsonの一応の証拠のある事件はすべての状況において「十分に説得性のある」または「比較的説得性のある」と暗示的に結論付けたと認定し、その結果、比較衡量によって暫定的差止命令の付与が支持されると認定しました。

大法廷は、また、一審判事が比較衡量を評価する際に、Nelsonがオーストラリアで製品を供給できなかったこと、市場の現状、Martinの余剰従業員、Martinによる販売支出の無駄、Martinが製品のための棚スペースを失ったことなどを含む他のさまざまな関連事項を考慮しなかった、というMartinの主張を却下しました。

結論

最終的に、大法廷は、控訴を棄却し、MartinにNelsonの訴訟費用を支払うよう命じました。この案件は一審判事に戻され、実質的な訴因の特定や最終的な救済が決定されます。

中間決定は、競合他社の製品の外観の様相を「借用」しようとする取引業者への再びの警告となり、そうすることで、そのような行為が、オーストラリア消費者法に基づく誤解を招く詐欺的行為規定の範囲内に取り入れられる可能性があります。

この決定はまた、裁判所の裁量の行使を含む決定を上訴することの固有の課題を示しています。

この記事は、弁護士のTaryn Francisと特別弁護人のJacqueline Chelebianによるものです。

1 House v The King (1936) 55 CLR 499 at 504-505

この記事は最初に2020年8月17日に英語で公開されました


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