実務上のメモ:シンガポールで外国ルート審査を利用する際の医薬用途クレームの取り扱い

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2020年1月1日までは、国内または国際出願日が2020年1月1日以前のシンガポール出願、あるいは2020年1月1日以前に出願されたシンガポール分割出願の特許審査オプションとして、外国ルートを利用することができました。外国ルートの請求期限は、パリルート出願またはPCT国内段階移行出願の最初の優先日から54カ月、あるいは分割出願の実際の出願日から54カ月です。そのため、現在係属中であり、審査オプションとして外国ルートを引き続き使用できる出願が、少なくとも2024年6月30日までは存在することになります。

以前の最新ニュースで紹介したとおり、外国ルートの採用時にはさまざまな課題があります。このような課題のうち、医薬品およびライフサイエンスの出願でよく見られる課題の1つは、シンガポールでは特許性がない、治療方法(MOT)に向けられるクレームに関するものです(すなわち、以前の最新ニュースの第5条)。こうした治療方法に関するクレームは、特許性がないという問題を克服するために、スイス型の第二医薬用途形式に補正することもできますが、こうした補正は外国ルートにおける「クレームの関連性」の要件も満たす必要があります(すなわち、以前の最新ニュースの最初の第2条)。以下に示すガイドラインでは、外国ルートにおいて特許付与の基として使用される外国出願や登録特許に存在するこうした治療方法に関するクレームをスイス型第二医薬用途形式に補正して、引き続き「クレーム関連性」の要件を満たすことができる場合と、こうした補正が不可能な場合について解説していきます。

外国出願・登録特許のクレーム外国出願・登録特許は外国ルートにおいて使用できるかメモ
シナリオ1
外国出願・登録特許のすべてのクレームが治療方法に関するクレームである場合(例えば豪州や米国の出願・登録特許)
不可
  • 治療法に関するクレームは特許性がありません。
  • 治療法に関するクレームをスイス型第二医薬用途の同等クレームに補正することはできません。スイス型第二医薬用途クレームは特定の治療を意図する医薬品の調製方法を定義する「目的限定型のプロセス」に対するクレームであると解釈され、治療ステップを含む治療法に関するクレームに関連するものとはみなされません。
  • そのため、「クレームの関連性」の要件が満たされません。
シナリオ2
外国出願・登録特許のすべてのクレームが、以下を含む「目的限定型の製品」クレームである場合(例えば欧州の出願・登録特許):
(i) 「薬剤として使用するための化合物X」
(ii) 「治療に使用するための化合物X」
(iii)「病気Yの治療に使用するための化合物X」
不可
  • このような外国出願・登録特許(例えば欧州出願・登録特許)のクレームは対応国では第二医薬用途クレームとして審査(および許可・付与)されます。この場合、病気Yの特定の治療目的のための化合物Xの使用が先行技術で開示されている場合にのみ、このクレームは新規性がないものとされます。対照的に、シンガポール出願では、同一のクレームは審査中に第一医薬用途クレームとして、異なる解釈がされます。この場合、クレームは化合物Xのいかなる先行する医薬用途によっても新規性がないものとされます。
  • したがって、化合物Xが新規であるか否かを問わず、こうした外国出願・登録特許のクレームに基づいて外国ルートを使用することはできません。
  • クレームをスイス型第二医薬用途の同等のクレームに補正することもできません。これは「目的限定型のプロセス」クレームとして解釈され、「目的限定型の製品」クレームに関連するとみなされないためです。
  • そのため、「クレームの関連性」の要件が満たされません。
シナリオ3
治療法に関するクレーム(例えば対応する豪州・米国の出願・登録特許から)、または「目的限定型の製品」クレーム(例えば対応する欧州出願・登録特許から)に加えて、化合物Xそれ自体に対するクレームが存在する場合
  • 治療方法に関するクレームまたは化合物Xに向けられた「目的限定型の製品」クレームは、スイス型第二医薬用途と同等のクレームに補正することができます。これは、補正されたクレームが化合物Xそれ自体のクレームに「関連する」とみなされるためです。
  • そのため、「クレームの関連性」の要件が満たされます
  • しかしながら、いずれにせよ、スイス型クレームは「新規事項の追加」(すなわち、以前の最新ニュースの第7条)、およびサポート(すなわち、以前の最新ニュースの最初の第1条)の要件を満たす必要もあります。なぜなら、どちらも外国ルートの審査要件であるためです。

上記を鑑みて、もし出願人が外国ルートを使用するつもりであれば、外国ルートにおいて使用するつもりである外国出願・登録特許に、化合物それ自体のクレームおよび・またはすでにスイス型第二医薬用途形式のクレームがあることを確認することが重要です。そうでなければ、もし外国出願・登録特許のクレームが上記のシナリオ1またはシナリオ2に該当した場合、その外国出願・登録特許をシンガポールの外国ルートにおいて使用することはできません。

シンガポールでの特許出願に関する外国ルートオプションについてご質問等がありましたら、お気軽に弊所までお問い合わせください。

この記事は最初に2021年8月24日に英語で公開されました


弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。

日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。

出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。

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