医療使用クレームの侵害への入り交じったメッセージおよび成功予測への数の付与

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Mylan Health Pty Ltd (formerly BGP Products Pty Ltd) v Sun Pharma ANZ Pty Ltd (formerly Ranbaxy Australia Pty Ltd) [2019] FCA 28 (『 Mylan v Sun Pharma』) は薬物フェノフィブラートに関する3件の特許についての裁判事件です。フェノフィブラートは特に糖尿病患者において異常血中脂質を治療するために使用される医薬品です。これら特許のうち1件(オーストラリア特許第2006313711号、『711号特許』)は糖尿病性網膜症を治療するためのフェノフィブラートの使用に関し、他の2件の特許(豪州特許第731964号、『964号特許』および豪州特許第2003301807号(『807号特許』)はフェノフィブラートの組成物および製剤に関します。

Sun Pharma(旧Ranbaxy)は、オーストラリアにおいて複数のフェノフィブラート製品(『Ranbaxy製品』)を市場に出そうと計画し、Mylanはそのことが711号、964号および807号特許の特定のクレームの侵害にあたると主張しました。Sun Pharmaは侵害を否定し、主張されたクレームの有効性に対して抗議しました。

この判決には特に興味深い点が2点あり、それはスイスタイプ・クレームの侵害と711号特許の進歩性に関するものです。判決においてはその他複数の問題も考察されました。

スイスタイプ・クレームには『客観的意図』が必要

Mylan v Sun Pharmaにおいて、ニコラス・Jは、スイスタイプ・クレームの侵害がどのように証明されるかに関して連邦裁判所からのさらなる指導を提供しました。問題のクレームは、網膜症、特に糖尿病性網膜症の予防および/または治療のための医薬品の製造のためのフェノフィブラートまたはその誘導体の使用についての711号特許のクレーム1でした。

スイスタイプ・クレームは、特定の目的のための医薬品の製造に関するもので、従って、その医薬品がクレームされた目的のために使用されるという意図を製造者が持たなければならないという意味で、製造者の側における『心理的な要素』を含みます。ニコラス・Jは、その意図は主観的意図または客観的意図でなければならないかどうかを検討した英最高裁判所の Warner Lambert Company LLC v Generics (UK) Ltd [2018] UKSC 56を参照しました。主観的意図とは、製造者の実際の心理状態、すなわち医薬品がクレームされた目的を意識しつつ故意に製造されるかどうかに関します。客観的意図とは、彼または彼女の行為の意図による普通かつ自然な結果を、一般人が予見したであろうように解釈する法的概念です。ニコラス・Jはこの点について判示する必要はなかったのですが、客観的意図の妥当性を支持した英最高裁判所に同意しました。

ニコラス・Jは、製造者の意図は、『特にその製品の承認された製品情報(「PI」)、あらゆる製品表示、ならびに製品が販売されるべき市場の性質、大きさおよび他の関連特性を含む』すべての関連事実および状況を考慮して客観的に確認されるべきであると考えました(段落102において)。しかし、『製造される製品のかなりの部分がその病態を治療するために使用されることが合理的に予見可能であるまたはあり得る』という事実は、『少なくともその製品が、指定されていないその他の病態の治療においても広く使用されてる場合には確かに決定的でない』(段落103において)としました。

ニコラス・Jは、医薬品がクレームされた治療に有効または適当であるかどうかは政策の観点から良くない試験であるとも指摘し、『それは、そのスイスタイプ・クレームの優先日より前に、ある症状を治療するために使用する目的で医薬品を製造した人が居た場合、クレームに新規性を付与する対象を提供した第2の症状を治療する目的でも使用されるかもしれないという理由だけで、その人に侵害の責任を負わてしまうだろう』と判示しました(段落101において)。

製品情報および表示、不使用、製造者の意図の決定

Ranbaxy製品には、当初、糖尿病性網膜症の進行を遅らせるための治療用途を示すPIが添付されていましたが、PIはその後訂正され、その治療用途は削除されました。先発医薬品には治療用途として糖尿病性網膜症の進行の遅延が表示されており、訂正されたRanbaxy製品のPIは先発医薬品と生化学的に同等であることが示されていましたが、ニコラス・Jは、これらのRanbaxy製品は糖尿病性網膜症の進行を遅らせるために使用される意図で製造されたのではないと判定しました。従って、侵害は立件されませんでした。

入り交じったメッセージ

対照的に、対応する治療方法クレームに関してはRanbaxy製品の大部分の使用方法がこのクレームを侵害すると考える理由が被告にあったことに基づき、クレームは侵害されると判示されました。言い換えますと、この製品がクレームされた目的のために使用されることが一般人によって予見可能であったことが証拠によって示されました。治療方法クレームの侵害の決定をスイスタイプ・クレームの非侵害の決定と調和させることは困難です。なぜ製品の大部分がクレームされた症状を治療するために使用されることが合理的に予見可能であるという事実が、製造者の客観的意図について決定的でないのかという理由を、裁判官殿が詳細に述べておられたら有用だったでしょう。

進歩性

Mylan v Sun Pharma は進歩性の試験に関してもある程度の有用な説明を提供しました。以下の修正されたクリップス(Cripps)質疑を参照して、711号特許のクレームの進歩性が検討されました。

基準日における概念上のチームは、すべての関連先行技術の知識を含むすべての状況において、糖尿病性網膜症の予防または治療に用いられる医薬品として、その目的で使用される他の治療法への有用なまたはより良い代替法をそれが生み出す期待を持ち、当然の事としてフェノフィブラート(単独でまたはスタチンと一緒に)を試してみるよう直接導かれるだろうか?

ニコラス・Jはクリップス質疑において『直接導かれる』はただ一つのものが自明であり得ることを意味しないことを強調しました。当業者が複数の異なる選択肢においてそれぞれが有用な代替を生みだすだろうと期待し、当然の事として試みるよう直接導かれるいくつかの場合もあります。複数の経路が自明な場合もあるのです。

糖尿病性網膜症の治療においてフェノフィブラートが有効であると証明される見込みは『5分5分以上のものではなかった』という鑑定証人の一人からの見解を考慮して、ニコラス・Jはクリップス質疑に肯定形で答えるにはどの程度の成功の予測が求められるかも考察しました。裁判官殿は、修正されたクリップス質疑はたとえ当業者が成功の見込みは5分5分未満と考えても、肯定的な回答を得られるかもしれないと結論しました。ただし、これはそれぞれの案件の状況によります。

まとめ

スイスタイプ・クレームの侵害に関するニコラス・Jの判示は、オーストラリア法におけるスイスタイプ・クレームと治療方法クレームの違いをさらに強調します。 以前報告しましたように、出願人は医薬品用途に関する出願には確実にスイスタイプ・クレームと治療方法クレームの両方が含まれるようにするべきです。

Mylanはこの判決に対して上訴しました。弊所ではこの事件の進展を追っていきます。

この記事は最初に2019年8月27日に英語で公開されました


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