先行公表後のオーストラリアおよびニュージーランドにおける特許権保護の取得

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発明に対する特許出願はその発明が公表される前に出願されることが理想的です。それが出来なかった場合には、クレームされた発明の新規性および進歩性を評価する際に考慮される「先行技術」として、その先行公表が引用されるという結果になります。特に、発明についての情報をたった一人の人としか共有しなかった場合でも、その人が秘密保持義務なく自由に情報を使用できる場合、公表とみなされる場合があります[1]

もし発明がそれに対する特許出願の提出以前に(同意の有無に関わらず)公表されている場合、発明の特許権保護を得るには以下の選択肢を利用することができます。

最初の公表から12ヶ月経過していない場合

  1. グレース・ピリオド:オーストラリアおよびニュージーランドでは、出願人がその発明の最初の公表から12ヶ月以内に完全な特許出願を提出すれば、先行公表はその特許出願に対する先行技術とはみなされない、という先行公表に対する12ヶ月のグレース・ピリオドが適用されます[2]。よって、発明がすでに公表されている場合、その発明に対する特許出願が12ヶ月の期限までに確実に出願できるよう、できるだけ早く弁理士を手配することを強く推奨します。

なお、ニュージーランドでは発明者または出願人の同意によるまたは同意を伴う公表についてのグレース・ピリオドの規定が2018年12月30日に施行されたため、2018年12月30日以降の公表にのみ適用されます。

最初の一般公衆開示から12ヶ月以上経過している場合

  1. 期限の延長 :オーストラリアでは、特定の状況において先行公表についてのグレース・ピリオドを期間延長することが可能です。そのような期間延長は過誤または遺漏があった場合、あるいはやむを得ない状況に起因して遅延が生じた場合などに適用されます[3]。延長が許可されるためには、遅延につながった状況が明確に説明された宣言書を特許庁に提供する必要があります。しかし、ニュージーランドでは、これに類似する規定がないため、猶予期間の延長を得ることはできません。
  2. 革新特許:グレース・ピリオドに対する期間延長を得ることができない場合、次善の選択肢は、公表されていなく、かつ審査において『革新的』な特徴として確立することができると思われる少なくとも一つの特徴を含む、その発明についての革新(innovation)特許を出願し、それによって少なくともその発明に対する限定された保護を得ることです。しかし、『革新性』の閾値は『進歩性』のそれより低いものの、革新特許の有効期間は8年間のみです。また、この選択肢も、ニュージーランドでは利用できません。ニュージーランドでは革新特許制度(またはその同等物)がないからです。

先行公表の程度にもよりますが、関連発明の特徴が実質的には公表されていなかった場合、完全な出願を提出することが勧められる場合さえあります。例えば、発明装置の写真の公表において、その写真が装置の外部の特徴を示すだけと仮定した場合、発明の特徴が装置の内部機構にあるとすれば、装置の特許性には影響を及ぼさないでしょう。

上記情報は、オーストラリアおよびニュージーランドに関するものです。他の国において特許権保護を請求する場合、グレース・ピリオドに対する規定は各国で異なるため、グレース・ピリオドが適用されるかどうかを判断するために、各案件ごとに慎重な査定をする必要があります。さらに、大部分の国では、オーストラリアと類似する革新特許制度はなく、グレース・ピリオドに対する期間延長も認められていません。


[1] Fomento Industrial SA v Mentmore Manufacturing Co Ltd [1956] RPC 87.

[2] Patents Act 1990 (Cth) s 24, Patents Act 2013 (NZ) s 9.

[3] Patents Act 1900 (Cth) s 223

この記事は最初に2019年9月4日に英語で公開されました


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