中国最新情報:待望の新しい特許法改正草案について議論するための意見公募が始まる

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法改正について言及する複数の発表を受けて、中国特許法の変更が待ち望まれています。2020年7月3日、全国人民代表大会により「中華人民共和国特許法修正案(草案二次審議稿)」がオンラインで公開され、2020年8月16日までさらなる意見が募集されています。重要な項目としては、医薬特許に関する規制当局と特許庁との連携、また、米中貿易協定(以下に挙げる関連記事を参照)で複数の特許法関連の約束を締結することなどがあります。

予想通り、提案された改正の中核部分は医薬分野に関連し、特許法におけるパテントリンケージと特許期間延長システムを作成することを目指すものでした。

以下に、改正内容から一部を選び、その重要ポイントをまとめます。

  1. 医薬品パテントリンケージの予備期間

    新薬の出願人と、(米国「オレンジブック」型の中国市販薬特許情報記録プラットフォームに記載されている)関連する医薬品特許の特許権所有者の紛争を処理するため、新規および追加期間がさらに提案されました。前回2017年5月に行われた議論と比較して、今回は、特許権保有者(または利害関係者)は中国国家薬品監督管理局(NMPA)によって新しい販売承認申請が公告されてから30日以内に、関連特許に基づいた新薬の出願人に対して訴訟を起こすものとすると記載されています。2017年に言及された公告後20日という期間よりは長くなったものの、この時間枠ですと依然として、特許権保有者が不服申立てを行うには時間的圧力がかかることになります。興味深いことに、訴訟は法廷では侵害訴訟のみとなりますが、中国国家知識産権局(CNIPA)による行政的な決定を求める申請とすることもできます。そのため、紛争処理を求める場所を選択する必要があります。30日の期限内に訴訟または申請を起こさなかった場合、医薬品の承認申請者は、裁判所またはCNIPAから関連する特許の非侵害宣言を求める機会を得ることとなります。

    侵害訴訟の申請後のパテントリンケージの仕組みに関する条項は完全には最終決定されていないため、改正草案の表現に従ってCNIPAとNMPAの間でさらに定義される必要があります。現在の文言では、侵害の申し立てを受理してから9か月以内に裁判所またはCNIPAが権利侵害の判決を下した場合、NMPAは、新しい化学医薬品の医薬品認可の承認について、判決を下すことができると規定されています。改正案では、提案された仕組みによって技術審査が遅れることなく、最初の判決期は通常、権利侵害の申し立てが受理されてから約9か月後と想定されることが明記されるようです。さらに、CNIPAの行政的な決定に対する裁判所への控訴期限は、わずか15日と非常に短いことが記載されています。

  2. 特許期間とその延長
  3. 意匠特許の期間を15年に延長することが改めて確認されました。

    出願人とは無関係の特許権付与手続きの遅延が、初めて補償されることになります。ただしこれは、出願後4年、および実体審査に入ってから3年が経過してから特許が付与された場合に限ります。その後、規則に基づいて特許期間の調整が行われますが、この調整に関する規則の詳細についてはまだ未定です。

    医薬分野では、特許期間の延長は草案の本文で定められており、医薬品をまだ上市できない規制当局からの承認待機期間中の特許期間の損失を補償することになります。この補償期間は5年を超えてはならず、市場での新薬承認後の実質的な特許期間の合計は、14年を超えてはならないことが記載されています。この点に関して、この期間延長の対象となる「新薬」の定義は明確ではありません。前回報告したとおり、医薬分野における中国の特許法改正の文言では、「新薬」とは中国での販売承認に向けて、他の法域と比較して同時申請された薬品、としてのみ定義されるかもしれません。米国、欧州または日本での申請後、中国での販売承認の申請が1年以上遅延することは認められない可能性があります。これはすべて憶測ですが、定義については議論が必要であり、明確な説明が待たれます。

  4. 新規性のグレースピリオドに関する新しい条件
  5. 国内の緊急事態おいて公共の利益を満たすために、特許出願前6ヶ月以内に発明を開示した場合、一定の条件下で、新規性を損なう先行技術の対象から免除を受けることができます。これは、最初に特許を出願するために、保健衛生に関する緊急事態が発生した際の重要な発見についての発表を出し惜しみさせないようにするための「COVID 19対策法」であるとも言えます。なお、「国内」とは中華人民共和国(中国)の国内であり、この条件は中国で発生した緊急事態にのみ適用されます。

  6. 権利行使に関する改正
  7. また、損害賠償の裁定額を算出するために優先される方法にも変更があります。裁定額はまず、権利侵害を原因とする特許権所有者の実際の損失に基づいて評価すべきであり、そうでない場合は権利侵害を原因として侵害者が獲得した利益に基づいて評価すべきであると提案されていました。どちらの方法も、損害賠償の裁定額評価の起点として同程度に優先されるようになります。

    証拠不十分の観点から、優先される計算が不可能な場合は、法定裁定額を引き続き補償金として決定できます。損害賠償の法定最大裁定額は、500万人民元(約70万米ドル)に引き上げられました。前回の草案で言及されていた最低金額は削除されました。

    この点に関して、前回の草案の改正に記載のとおり、損害賠償の裁定額は意図的な権利侵害に対する懲罰的損害賠償を引き続き含むことになります(通常の補償金額の1~5倍)。さらに、告発された権利侵害者側の証拠が存在する可能性を示すことに原告が成功した場合、権利侵害活動の範囲に対する立証責任が被告人に転換されます。その後、告発された権利侵害者がその証拠を提示しなかった場合、裁判所は原告の前提を事実とみなすことができます。

    オンラインでの提供による権利侵害が関わる事件について、インターネットサービスプロバイダーの連帯責任が言及されなくなりました。これは前回の草案からの特筆すべき変更点です。

    原告は、特許権所有者または任意の当事者が、権利侵害および権利侵害者について知った、または通知された日以前の(2年間ではなく)3年間に行われた権利侵害に対する訴訟を起こすことができるようになります。この期間は、権利侵害行為に加えて、権利侵害者の存在を知ったときにのみ起算されます。

  8. 特許権の濫用
  9. 改正案では、特許権所有者がその特許権を行使するには、誠実な手段が必要であることを確認しています。中国の独占禁止法に基づいて、特許権の濫用状況に対する追加処置についてもさらに言及しています。今回の改正では、このような疑いのある行動に対する制裁が引き上げられます。

  10. 意匠特許で特許可能な対象

    この草案では、部分意匠を意匠特許の特許可能な範囲に含めることで、将来的に部分意匠を保護可能であることが改めて明確になっています。これにより、この種の優先権を主張する意匠の外国出願を中国にも拡張する機会が増加します。

まとめると、多くの条項で引き続き決議と改正が進行中であることがわかります。弊所では今後も追加の草案および改正を注視し、さらなる最新情報を提供します。中国の特許法改正に関する詳細情報が必要な場合は、Oliver Lutzeまでお問い合わせください。

この記事は最初に2020年7月21日に英語で公開されました


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