オーストラリアの更新:イノベーション特許がついに廃止。段階的に

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2020年2月26日に、「Intellectual Property Amendment (Productivity Commission Response Part 2 and Other Measures) Bill 2019」 (知的財産法改正法) がついに可決されました。この法律の主な目的は、オーストラリア独自のイノベーション特許システムの廃止にあります。ただし、イノベーション特許は即座に廃止される訳ではなく、2021年8月26日から2029年8月26日までの8年間に渡って段階的に廃止される予定です。    

主な期限を次に示します。

  • 2021年8月26日までは、何も変更はありません。既存の制限に従って、イノベーション特許出願を自由に出願できます
  • 2021年8月26日以降は、その出願日が2021年8月26日以前の場合、イノベーション特許が付与されます。既存の特許出願またはオーストラリアを指定しているPCT出願は出願日が2021年8月27日より前である場合、新しく出願する分割イノベーション特許出願の基盤、または通常の方法でイノベーション特許出願に変更することができます。
  • すべての付与されたイノベーション特許権は、通常の8年間の権利期間を有しますが、2029年8月26日には、すべてのイノベーション特許が満了となります。

背景

オーストラリア政府は2000年に、下位の発明保護に対して費用効果の高い手段をSMEに提供することを目的にした、イノベーション特許システムを立ち上げました。イノベーション特許には通常特許と同等の新規性要件がありますが、進歩性に関しては「イノバティブステップ」と呼ばれる、進歩性に比べて厳密性が緩いしきい値を満たす必要があります。この緩い特許要件と引き換えに、保護期間は8年に短縮され、クレームは5項までの制限があります。付与前の実体審査は不要なため、特許権者は潜在的に費用を節約できます。

導入後、イノベーション特許への反応はさまざまでした。支持者は、期待通りの効果があり、下位の発明に対する低コストな保護手段になっているためSMEにとって重要だと主張しています。しかし、イノベーション特許に対する反感はここしばらく高まっていました。2008年には、連邦裁判所で初めて「イノバティブステップ」のテストに対する評価が行われました。判決によると、テストに必要なのは、クレームされた発明と発明の実施に関する先行技術の貢献の間の区別の一点、とされました。実施の救済は通常特許と同等ということもあり、上記の判決によりイノベーション特許に意図されたよりも多くの権利をあたえることとなってしまったのです。

2012年までには、イノバティブステップのテストをより厳格に修正するよう計画されていました。  この計画が進むことはありませんでしたが、イノベーション特許制度の廃止を後押しする声がProductivity Commission (生産性委員会) により取り上げられ、「Intellectual Property Amendment (Productivity Commission Response Part 2 and Other Measures) Bill 2019(知的財産法改正法)」の導入へとつながったのです。

イノベーション特許の段階的な廃止

この新しい法律には、イノベーション特許の方式審査の要件が導入され、イノベーション特許の日付は2021年8月26日 (開始日) 以前でなければなりません。事実上、廃止過程は18ヶ月間は休止状態で、開始日までの間、新たなイノベーション特許の出願を自由に行えます。

ただし開始日以降は、係属中のイノベーション特許にかかわらず、開始日またはそれ以前の出願日を持つ既存の特許出願から派生した、または変更された特許の場合にのみ、新しいイノベーション特許が許可されます。そのため、イノベーション特許の取得は可能ですが、開始日において既存であった特許出願に開示されている事項のみが対象になります。「出願日」は特許法の第30条に定義されており、オーストラリア出願(通常またはイノベーション)の出願日またはその親出願、またはオーストラリアを指定しているPCT出願の国際出願日を表しています。 

当然のことですが、イノベーション特許の最大存続期間は出願日より8年間となります。開始日である2021年8月26日より後の出願日を持つ新たなイノベーション特許は付与されないため、開始日から8年後の2029年8月26日には、すべてのイノベーション特許が満了となります。

イノベーション特許制度の段階的な廃止に関する日付を、次のタイムラインに示します。

示唆されること

段階的な廃止期間の採用により、イノベーション特許権を確保するために出願人が殺到することを避けることが出来ると思われます。ただし、今後の18ヶ月という期間、特に2021年8月26日が近づくに連れて、発明者は進行中のIPを検討することをお勧めいたします。イノベーション特許制度を利用できる選択肢を残しておくために、仮出願、またはまだ出願していない発明の出願を早めに行う価値は十分にあるかもしれません。

この記事は最初に2020年3月5日に英語で公開されました


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