オーストラリア:寛大な国

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オーストラリアの実務に対してよくある質問に、期限が過ぎた後の国内段階移行が可能かどうか、というものがあります。これは、オーストラリアでは1990年特許法223条の、一般的な期間延長の規定を通じて可能です。

223条(1)下では、下記の者による過誤又は遺漏のために,一定の期間内に実行するよう要求されている関連行為が,その期間内に実行されないか又は実行することができない場合は,局長は,当該行為を実行するための期間を延長しなければならない

  • 局長若しくは副局長、または
  • 職員、または
  • 特許局のために役務を提供する者若しくは提供を申し出ている者、または
  • 受理官庁、または
  • 国際知的所有権機関の国際事務局。

第223条 (2) 下では、局長は以下の理由により、当該行為を実行するための期間を延長することができる

  • 関係人又はその代理人若しくは特許弁護士による過誤若しくは遺漏、または
  • 関係人が制御することができない状況。

期間延長の規定は、各種の行為(出願の提出、オーストラリア国内段階への移行、審査請求および更新料の支払いを含む)の実行期限に適用することができますが、この規定は拒絶理由を含む審査報告書(オフィス・アクション)に続く最終受理/許可の期限の延長には適用されません。

1990年特許法には、当該行為の不履行により特許が失効または停止した特定の期間内に、契約によって発明を実施または利用、または一定の行為を行なった者、またはその他発明を実施または利用した者への保護または補償のための規定もあります [1]。

規則22.21 (2)(c) によると、これらの者は、承認された形式により局長に発明を利用するためのライセンスの付与を申請することができます [2]。

1990年特許法第223条 (9) および223条 (10) には、以下のように記載されています:

(9) 局長が次の事項、すなわち、 /p>

(a) 関連する行為を実行するための 3 月を超える延長、又は

(b) 所定の状況において,所定の関連する行為を実行するための期間の延長、

を認可した場合は,許可されている期間内に関連する行為が実行されなかったこと,特許出願が失効したこと又は特許が停止したことのうち何れか該当するものを理由として,期間延長請求についての(4)に基づく公告が行われる前に,その発明を実施した(又は契約その他の方法により、実施するための一定の準備をした)者の保護又は補償に関しては、所定の規定が効力を有する。

(10) 次の期間に行われた侵害については,侵害訴訟を起こすことができない。

(a) 特許出願が失効した日から回復した日までの期間、又は

(b) 特許が停止した日から回復した日までの期間。

これらの規定の結果として、侵害をしうる者は、特許の満了期限と期間延長の申請の間に、発明を利用するためのライセンスの申請ができることになります。ただし、条件として、ライセンシーとなりうる者は自身が特許の停止または失効の事実を認識していること、およびライセンスの申請がこの認識の結果であることを証明する必要があります。

この条件は、Law v Razer Industries Pty Limited [2010] FCA 1058.で考察されました。Law氏は特許の所有者であり、更新料の支払いを行わなかったため、特許は停止状態にありました。この停止状態の間、RazerはLaw氏の発明の請求項の範囲内に入る製品を製造し販売しました。Razerはこの時点では特許の存在を認識していませんでしたが、認識してすぐに発明を利用するためのライセンスの申請がなされました。しかし、Law氏は第223条に基づいて期間の延長を認められ、特許の回復日にRazerに対する侵害訴訟を開始しました。

判決に至る際に、判事は次のように述べました:「ある特定の特許が停止したという事実と、保護を得ようとしている者によるその事実への依拠との間には、関連がなければならない」。Razerは特許の存在を認識しておらず、それゆえに、特許は停止されていたために223条 (9) および規則22.21の規定は適用されず、Razerはライセンスの付与には適格ではなかったと結論付けられました [3]。

現在、第223条では、特許が回復した時点で継続的な特許の実施を可能にするためには、ライセンスを取得しなければならないということが要件です。

2017年知的財産法改正法案の公開草案では、提案されている223H条によりこの要件が取り除かれることになっています [4]。提案は、3ヶ月以上の延長が認められて特許が回復となり、第三者が特許失効後かつ延長申請の前に特許を実施した場合に、自動的に「実施する権利」が得られるようになるものです。この「実施する権利」は、特許が回復された後も、ライセンスを申請することなしに、第三者がその発明を自動的に実施し続けることを可能にします。

加えて、上記の提案は、失効/停止した特許の実施が特許の満了を認識した結果であるという要件を排除しようとしています。これについては、「特許の存在の認識を要求するということは、デューデリジェンス調査を実行していても、特許システムの複雑さにより特定の特許の存在を確認できなかった際に、その調査を実行した者を罰することを可能にしてしまう。新しいサブセクション223H(2)は、特許の実施を開始した、または実施するために一定の行為を行った者に、特許の失効の認識を要求しないことで、これに対処する。」という議論がなされています。

その他追加提案には、この「実施する権利」が譲渡可能になるというものがあります。つまり、発明を実施する権利を他者に売却することができる可能性があるということです。これに関するさらなる進展はまだ公になってはいません。

要約すると、オーストラリアのシステムは、ある行為を行う意志はあるが、その行為の実行が過誤または遺漏によって挫折した場合、当該行為の実行のための期間を延長することに関しては、きわめて寛大ということです。また、オーストラリアの制度は特許が実際に失効している期間内に発明を実施した第三者に対しても、第三者が特許の停止または失効を認識していたことを立証できるといった条件付きで、きわめて寛大でもあります。

上記についてご不明な点がありましたら、弊所までお気軽にお問い合わせください。

この記事は最初に2019年2月7日に英語で公開されました。


[1] Patent Manual of Practice & Procedure 3.2.6 Reg 22.21(4) – Opposition to Grant of Licence.

[2] Patent Regulations 1991 (Cth) reg 22.21(2)(c).

[3] Law v Razer Industries Pty Limited [2010] FCA 1058.

[4] Intellectual Property Laws Amendment Bill 2017.

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