Olvey & Sketo V Danko & Gabrys Case Note

判例研究: OLVEY & SKETO V DANKO & GABRYS [2019] APO 42

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この判例は、発明における発案から発展までのプロセスにおいて、包括的に記録を維持することの重要さを浮き彫りにしました。 

Summary

長官代理人Isaac Tanは、Olvey & Sketo v Danko & Gabrys [2019] APO 42 において、1990年特許法の第32条に基づいて、出願人の間の紛争に関して決定するには提出された証拠が不十分であり、従って出願は5名の出願人全員の名義のままであるという判決を下しました。

「ダンボールパレット(Corrugated Pallet)」という名称の豪州特許出願第2016259383号の記載出願人はSean G. Gumbert、Joseph J. Danko、 Douglas A. Olvey、 James L. Sketo そして Christopher W. Gabrysを含みます。記載発明者SketoおよびOlveyは、長官が第32条に基づいて出願人としてのGumbert、DankoおよびGabrysを削除する決定を下すよう請求しました。

特許法の第32条

第32条の条文は以下の通りです:

  1. 特許出願に関し、2以上の共同出願人の間で、出願手続を進めるべきか否か、又はどのような方法によるかを巡って紛争が生じた場合は、局長は,それら出願人の何れかから規則に従って請求があったときは、1又は複数の出願人の名義のみで出願処理を進めるか若しくは処理方法を規制するか、又は場合によりその両者とするかについて、局長が適切と判断する決定を下すことができる。
  2. 局長は、出願が失効しているか否かについて、(1)に基づく決定を下すことができる。
  3. 局長は、(1)に基づく決定を下す前に、まず各共同出願人に対し聴聞を受ける合理的な機 会を与えなければならない。

発明概念

発明者としての資格を決定する際に、長官代理人は University of Western Australia v Gray [2009] FCAFC 116 において採用された(a)発明概念の特定、(b)発明概念の確立に責任を持つ人の決定、および(c)なんらかの契約関係または受託関係が発明の所有権にどのように関与しているのか決定、を含む手法に従いました。

本発明は、商品を出荷するためのパレット、特にダンボールパレットに関します。発明概念は、2本のリブのみを有し、ロックする配置と組み合わされた際、強度を増加しおよび機械アセンブリしやすくする段ボールパレットにある、と長官代理人により要約されました(どちらの当事者からも異論はありませんでした)。

申立

第32条に基づく申立書を作成する際、申請者ら(SketoおよびOlvey)は、かれら2名だけが発明者であり、従って、Gumbert、DankoおよびGabrysはこの技巧の発明者でなく、例えば真の発明者らとの合意により出願に対していかなる資格も持たないことから、出願人として削除されるべきであることを実証しなければなりません。

申請者らと残る出願人との両方は外国法律実務者からの証拠を提出しましたが、どちらの提出においても各出願人が発明概念に対してどのような貢献をしたのかを明確にすることができなかったため、これらは長官代理人の決定においてほとんど意味を持ちませんでした。

さらに、Gabrysは2通の会議招集状と、その場において発明概念が認識されたとGabrysが主張する2時間分のグループ会議(5名の出願人全員を含む)の全般的な協議事項を提出しました。しかし、Gabrysは会議の議論に関してそれ以上の証拠をまったく提供できず、これらの会議招集状および協議事項も判決においてほとんど意味がありませんでした。

長官代理人は段落[22]においてダンボールパレット設計のどの様相が検討され、誰が貢献したか示す文書があったら有用だったろう。さらに、私の見解ではこれらの会議においてどのパレット設計が議論されたか証明できるかすら明らかではない。」と述べました。

最後に、申請者らおよび残りの出願人はGabrysおよびDankoがそれぞれ発明概念に対してどのように貢献したか議論するビデオ録画された証言録取の筆記録を提出しました。しかし、長官代理人はそれが非常にわずかな証拠であり、不確かな文言(すなわち、「私は思う」や「私の記憶が正しければ」)が使われており、さらに誰が発案を発展させたかに関するGabrysおよびDankoからの全般的な不確かさがあるとして、依然として誰が発明概念に貢献したかを具体的に結論付けることができませんでした。

判決

限られた証拠を考慮して、長官代理人はどの出願人が発明概念の元であるかを結論付けることができず、32申請は却下されました。従って、出願人は変更されないままでした。

この判決は、特に2以上の当事者が含まれるとき、発明の発案から発展までのプロセスにおいて、発明に関する詳細な説明および記録を維持することの重要さを強調しました。

この記事は最初に2019年10月3日に英語で公開されました


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