判例研究:Sensis Pty Ltd Ltd V Senses Direct Mail and Fulfillment Pty Ltd [2019] FCA 719

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背景

この判例の当事者:

  • Sensis Pty Ltd(「原告」)は、オーストラリアのダイレクトマーケティングおよびデータ処理業者であり、以下のオーストラリア商標(「Sensis商標」)の登録所有者です。
番号 商標
登録日
関連サービス
878625 SENSIS 2001年
6月8日
第35類:広告サービス;マーケティング、マーチャンダイジング、小売および卸売流通サービス(輸送を除く);ビジネスアドバイザリーサービス、ビジネス計画および分析サービス;ビジネス情報の収集、準備、編集、保管、処理、取得および提供;およびビジネス情報サービス
1418010 SENSIS 2011年
4月4日
第35類および42類:広告サービス;マーケティング、マーチャンダイジング、小売および卸売流通サービス(輸送を除く);ビジネスアドバイザリーサービス、ビジネス計画および分析サービス;ビジネス情報の収集、準備、編集、保管、処理、取得および提供;データセキュリティサービス;およびコンピューターネットワークによる情報の抽出と取得、およびデータマイニング
  • Senses Direct Mail and Fulfillment Pty Ltd(「被告」)は、以下の商標(「Senses商標」)の1つ以上に従って、またはそれを参照して、ダイレクトメールサービスを提供しています。
    • SENSES DIRECT
    • SENSES DATA

2016年2月、被告は第35類のマーケティングサービスおよびビジネスマーケティングコンサルティングを含む広範囲のサービスで利用するため、以下の商標の登録を申請しました。

原告は、SENSES商標はSENSIS商標に欺瞞的に類似しており、被告はSENSES商標を使用することで、商標法1995(Cth)第120条(1)に基づいた原告の権利を侵害していると主張しました。

被告は、SENSIS DIRECT商標に関する侵害の申し立てを否認しました。ただし、被告はSENSES DATA商標に関する申し立てには異議を唱えませんでした。

被告はまた、原告に対して、不使用のため特定のサービスをその登録から削除することを交差請求しました。

商標は欺瞞的に類似しているか

この判例で検討すべき最初の課題は、商標が欺瞞的に類似しているかどうかです。

これは、一般的な知性と記憶力を持つ人物が、原告の商標であるSENSISを想起したときに、SENSES DIRECT商標に対して持つ印象の問題です。

商標侵害の文脈における欺瞞的な類似性の分析は、被告によるSENSES DIRECTの実際の使用事例の参照によってのみ行えることに注目することも重要です。

この判例では、裁判官はSENSES DIRECT商標がSENSIS商標に欺瞞的に類似しているということに十分に納得しました。この決定に至るにあたり、裁判官は以下のように言及しました。

  • 「SENSIS」と「SENSES」という単語の間には、視覚面でも音声面でも相当な類似性がある。
  • 追加の単語である「DIRECT」は単に説明的なもので、商標が全体として受け止められるような識別性を追加するものではない。
  • 消費者の間では、「SENSES DIRECT」を「SENSIS DIRECT」と書く多数のミススペルの証拠があった。
  • 消費者が実際に混同する事例があった。

侵害に対する被告の抗弁はあるか

もし関連する商標の登録を侵害者が申請した場合、取得していたであろうと裁判所がみなした場合(商標法 1995第122条(1)(fa))、その意見はオーストラリアでの侵害に対する1つの抗弁となります。

被告は、その使用が侵害に相当する場合、誠実な同時使用、つまり、被告はその商標を誠実に採用し、相当な期間の間、混同の事例なく、その商標を使用していたということを立証できるということに基づいて、この抗弁を使用できると主張しました。

ただし、この判例における大きな課題は、この抗弁をいつの時点で評価するかという問題でした。

被告は、その実際の出願の申請日(2016年2月2日)の時点で評価すべきだと考えました。もしこれが受理されない場合、被告は以下の代替日を示しました。

  • 被告がその抗弁を提出した日付(2016年8月11日)、または
  • 2018年4月/5月の聴聞の日付。

その一方で、原告は、最初に疑われた侵害行為が発生した時点である2013年5月の時点で抗弁を評価すべきだと主張しました。

両当事者は、それぞれの主張を支持する論拠を提出しました。しかしながら、裁判官は原告に同意し、評価は最初に疑われた侵害行為が発生した時点の日付で行われるべきだと判断しました。

いずれにしても、被告は商標の誠実な同時使用の立証には成功しなかっただろうと判断されました。裁判官は、被告がSENSES商標を誠実に採用したことを認めたものの、大きな混同が生じる可能性が高いことと、登録された場合当事者それぞれにとって不便であることを主な理由として、商標を登録する裁量を行使しないことを決定しました。

原告は、SENSES DIRECT商標の登録を排除するのに十分な評判があったか

原告は、被告が誠実な同時使用を立証できたとしても、オーストラリアにおける原告の高い評判により、被告はSENSES DIRECT商標の登録を取得すべきではないと主張しました。

この立場を成功させるためには原告は以下を立証する必要がありました。

  • SENSES DIRECT出願の優先日以前に、オーストラリアでSENSIS商標の評判が確立されていたこと、
  • この評判により、SENSES DIRECT商標の使用が欺瞞または混同を引き起こすこと、および
  • 欺瞞または混同の可能性が現実的かつ具体的であること。

提出された証拠に基づいて、原告の評判はディレクトリサービスを超えるサービスにまでは及んでいなかったことが判明しました。したがって、被告のSENSES DIRECT商標の登録を排除するために第60条は適用されないと判断されました。ただし、被告は最終的に誠実な同時使用を立証できなかったため、結果的にこの判断は余分なものとなりました。

ちなみに、裁判官は、誠実な同時使用は、第60条(評判に基づいた混同の可能性)に基づく異議申し立ての根拠に対する抗弁にはならない、というMcCormick & Company Inc v McCormick (2000) 51 IPR 102のケニー・Jの判決の裏付けに躊躇しませんでした。裁判官のコメントは判例の結果に一切影響を与えませんでしたが(いずれにしても第60条は主張されなかったため)、この先例に対して未だ異議が唱えられているのは興味深いことです。

不使用に対する交差請求

被告はまた、原告に対して、不使用である特定のサービスをSENSIS商標から削除することを交差請求しました。具体的に、被告は、原告の第35類サービスに、以下の除外を追加することを要求しました(「提案された除外サービス」)。

小包および郵便配達サービスを通じたダイレクトメールマーケティング資料の計画、準備および配布を含み、小包および郵便配達サービスを通じたダイレクトメールマーケティング資料の計画、準備および配布の受け渡しの一部として提供される以下のサービスを含まない、第35類の上述のサービスの一切:郵便配達(電子的およびオーストラリア郵便局による)、郵便フルフィルメント、デジタルプリント、郵便材料の折り込みおよびラップ包装、郵便物の封筒へのインテリジェント挿入、ターゲティングメーリングリスト、メーリングリストの編集、関連するSMSメッセージング、関連する電子メールメッセージング。

不使用訴訟に対抗するため、原告は、2013年7月11日から2016年7月11日の間に、SENSIS商標を提案された除外サービスと関連して使用していたことを示す必要がありました。

原告は、Sensis Data Solutionsが提供するMacroMatchと呼ばれるデータ検証および重複排除サービスを通じて、ダイレクトメールマーケティングサービスの送信を容易にするサービスに関連する使用を示す証拠を提示し、十分な使用があると主張しました。しかしながら、被告はこの使用が提案された除外サービスにおける商標の使用に相当しないと主張し、最終弁論で以下のコメントを提出しました。

MacroMatchは、自社がデータクレンジングを行うデータの種類または形式、ならびにそれが置かれるであろう使用に関して必然的に不可知です。データは「カスタマーサービスおよびサポート」、「テレマーケティングキャンペーン」、「カスタマーデータプロジェクト」、「CRMプログラム」、ならびにダイレクトメールマーケティングに使用される可能性があります。さらに、原告は「データクレンジング」後のデータを使用せず、顧客に返却してすぐに削除します。したがって、原告はデータをいかなる特定の目的のためにも使用しておらず、単にデータクレンジングのためのサービスを提供しているだけです。その後データ自体を使用するか、第三者のプロバイダーにおいてデータを使用することは顧客次第です。

利用可能な情報に基づいて、どちらのサービスも、顧客がそのマーケティング活動を行うことを可能にするデータ処理サービスの提供が関与するため、裁判官は、被告が提出した相違点は重要でないという結論に達しました。

このため、裁判官は原告に有利な判決を下しました。

また、公益的にも、以下の理由により、提案された除外サービスを削除しないという裁量の行使が支持されたことが判明しました。

  • 2016年の時点で、原告は、広告およびマーケティングサービスに関して、一般大衆の間でSENSIS商標の評判を獲得していた。
  • 商標を混同する可能性は、被告がダイレクトマーケティングサービスをさまざまな種類の広告およびマーケティングサービスの提供に拡張したことを含め、過去10年間にわたって広告およびマーケティングサービスの市場で起こった変化によって高まっていた。
  • SENSES DIRECTをSensisまたはSensis Directとミススペルする事例および混同の証拠があった。

まとめ

この判例における重要点のまとめ:

  • SENSES DIRECT商標は、SENSIS商標に欺瞞的に類似している。
  • 第122 条(1)(fa)に従った侵害に対する抗弁は、侵害行為の疑われた日付の時点で立証する必要があった。
  • 被告は、誠実な同時使用または「その他の状況」に基づく、侵害に対する適切な抗弁を立証することができなかった。
  • 原告は不使用に関する交差請求に対する抗弁に成功した。
  • 被告のSENSES DIRECT商標は、オーストラリアのSENSIS商標を侵害していると判断された。

この判例は、オーストラリアで商標を使用する前、または登録を申請する前にデューデリジェンスを実施し、ブランドに大金を投じてから紛争が発生するリスクを最小限に抑えることの重要性を強調しています。

この記事は最初に2019年8月7日に英語で公開されました


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