判例研究:Davies V Lazer Safe Pty Ltd [2019] FCAFC 65

Share

この判例では、平易な英語の意味を用いてクレームを解釈すること、およびクレームの言語に「光沢」を加えないことの重要性が強調されました。

背景

Davies V Lazer Safe Pty Ltd [2018] FCA 702において第一審では、被告の製品はオーストラリア特許第2003229135号、発明の名称「安全システム」(以下「特許」)の特許権者のクレームを侵害していない、との判決が下されました。

特許

この特許は、プレスブレーキのような、板金を曲げる機械のための安全システムに関するものです。機械は金属を曲げる可動部(下記の12を参照)の経路に障害物がある場合にそれを検出し、機械を停止させます。この場合、可動部の経路上の障害物は重要なもの(例えば身体の一部)の可能性もあります。

問題の焦点

上訴審では、請求項1において以下に再現している2つの特徴(1.5と1.6)の解釈が中心となりました(強調は筆者によります)。

(1.5) a processing and control means arranged to receive image information from the light receiving means and thereby recognise the presence of one or more shadowed regions on the light receiving means cast by obstructions in the region;

(1.5)受光手段からイメージの情報を受け、そして、障害物によって受光手段に投影される1つ以上の影の領域の存在によって、領域内に障害物が存在するかどうかを認識するように構成された処理および制御手段;

(1.6) wherein the illumination of the region is such that the processing and control means has sufficient image information to determine the boundaries of the or each shadowed region and control movement of the part dependent on said image information.

(1.6)前記領域の照射は、前記処理および制御手段がそのイメージの情報に応じて各影領域の境界を判断し、かつ部品の移動を制御するのに十分な情報を有するものとする。

第一審では、特徴1.5の「認識」という文言が、影の領域をただ単に検知するだけではなく、「認識する、すなわち、検知された影の領域を、既知のもの、つまり障害物の形状、と比較する」と解釈されました。この解釈は比較ステップを本質的に記している明細書の本文(特許の7頁 9〜11行目)と一致し、サポートもされていると第一審の裁判官は判断しました。

判決文の第40段落で、上訴審は「請求項1の文言は、『イメージの情報』および『認識』という言葉は検知された影の領域と既知の形状または障害物との比較を促すものとして理解されるべき、とは示していない」と述べ、第一審の裁判官の特徴1.5の解釈に異議を唱えています。上訴審はさらに、「1つ以上の影の領域の存在を認識すること」という文言は、「認識する」とは既知の物との比較を促すのではなく、「存在するものとして気づくこと」と理解されるべきであることを示している、と述べました。簡単に言えば、影の領域の存在が必要とされる全てであり、請求項1では比較ステップは正当化されないということになります。

第一審の裁判官は明細書の本文で特定されている概念を取り入れることによって、クレームの文言に「光沢」を追加した、と上訴審は判断しました。また、クレームは明細書の文脈全体に基づき解釈されるべきであるが、明細書の他の部分から引用した「光沢」をクレームの文言に追加することでクレームが占有する範囲を縮小や拡大することは合法的ではない、と重要な指摘がなされました。上訴審はいくつかの判例、特にWelch Perrin (610項)を挙げ、特許とクレーム解釈の原則はオーストラリアの法律下で十分に確立されていると述べました(第42段落)。

さらに上訴審は、特許請求の範囲を制限しないよう「例として」や「提示された実施形態」などの決定的ではない表現が明細書に用いられている点に注目しました。これは「明細書の本文は、その発明の範囲を設定することを目的としていない」という見解を示しています。

特徴1.6に関しては、第一審の裁判官により第1と第2の、2通りの解釈が行われました。上訴審は第1の解釈を却下しましたが、第2の解釈には同意しています:

…請求項1の適切な解釈では、障害物の相当な部分の輪郭または形状を判断するため、小点、小領域、点または端部とは対照的に、クレーム通り、影の領域の現実的に実質的な部分または一部を認識した上で、障害物による境界決定が必要とされる。

侵害に目を向けると、上訴審はもし第一審が正しい解釈に基づいていれば、侵害があるとされたLazer Safeの製品は特徴1.5を有していたと認定すべきであったとしました。しかし、Lazer Safeの製品は影の領域の境界を決定しないため、特徴1.6は有しないと上訴審は判断しました。したがって、特許のクレームの侵害はありませんでした。第一審による非侵害の認定が支持されたため、この上訴は却下されました。上訴審による判決は非侵害であったにもかかわらず、特徴1.5の解釈は一審の解釈よりも広いものでした。

この判決は、慎重にクレーム作成を行う重要性と、平易な英語の意味または辞書による定義に則った単語や言い回しを用いたクレーム解釈の重要性を強調しています。この原則はオーストラリアの特許法に基づいて十分に確立されていますが、明細書に記載されている実施形態や特定の例に影響されないようにするのは難しい場合があります。クレームを解釈するときは、明細書の文脈における単語または言い回しの意味が不明瞭な場合にのみ、明細書に依拠するべきでしょう。

この記事は最初に2019年5月9日に英語で公開されました


弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。

日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。

出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。

Share
Back to Articles

Contact our Expert Team

Contact Us