ラオスPDRでの特許出願係属期間の短縮と特許の質の向上

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2018年6月にラオスの知的財産に関する法律の改訂版が施行された一方で、ラオス科学技術省の知的財産部門 (DIP)における出願係属期間が長期に亘ることに未だ悩まされる出願人も多くいらっしゃるかと思います。 ただし、ラオスでの特許審査を短縮するためのさまざまな手段は存在します。 

ラオスでの特許保護を求める際の費用と時間を節約するために、ラオスは他のASEAN特許庁での出願人の特許保護の利用が可能な、ASEAN Patent Examination Cooperation (ASPEC) に参加しています。 参加している ASEAN知的財産庁は9ヶ国(ブルネイダルサラーム、カンボジア、インドネシア、ラオス人民民主共和国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)です。ASPECにより、ラオスDIPはこれらの知的財産庁での調査及び審査結果を利用し、その知的財産庁にて新規性および進歩性が認められたクレームがあった場合、それをラオスでの審査の際に参考にすることができます。 このようにして、出願人はASPEC申請から登録まで、審査の迅速化を図ることが可能となります。

ASPECの適格性を満たすためには、ラオスDIPでの特許出願が他のASEAN特許庁で出願、審査されたものの対応出願である必要があります。パリ条約下での優先権主張 (片方からもう一方、または両方が別の特許出願から) によりリンクされている場合、または両国の出願が同じ国際(PCT) 出願の国内移行出願の場合、特許出願は対応する出願となります。

2016年に、日本の特許庁 (JPO) により、ラオス特許審査を迅速化するための、第二の手段が開始されました。 ラオス科学技術省とJPO間での合意により、その枠組みが確立されました。 合意の下、特許出願がJPOで審査され、登録された場合、ラオスで出願された対応出願も、実体審査を行うことなく特許権が認められます。 そのため、JPOにて登録された特許を保有するラオスでの特許出願人は、日本特許の登録後であればいつでも、ラオス特許出願の登録のための適格性審査の迅速化を、DIPに要求することができます。

要件として、DIPで出願された特許出願と最先の優先日を共有し、ASPEC同様、パリ条約またはPCT優先権主張においてリンクされている必要があります。 また、ラオスで有効化を申請する際にDIPに提出する対応出願は、日本ですでに有効な特許である必要があるため、ラオスで係属中のクレームはJPOが特許付与したクレームと同一にする必要があります。

ラオスでの特許登録の迅速化を行う手段をさらに提供するために、中国国家知識産権局 (CNIPA) も、今年の前半に、一帯一路および中国-ASEAN IP協力に基づいた中国とラオス間のIP協力を実現するために、2018年に締結されたMOUに基づき、中国で有効な特許を保有する特許出願人は、ラオス特許出願の登録のための適格性審査の迅速化を要求することもできると発表しました。 

また最近では2019年11月27日に、ラオスのDIPはシンガポール知的財産権庁 (IPOS) との協力覚書 (MoC) を締結し、シンガポールで登録された特許をラオスで再登録し、シンガポールとラオスの両方の市場への企業参入を高速化できるようになりました。またMoCにより、DIPはラオス特許の審査のために、IPOSの特許調査および審査の専門知識やサービスを利用できるようになりました。IPOSの特許サービスと専門知識を活用して、ラオスDIPでの登録特許の質を向上するのが狙いです。 

このように、日本、中国、またはシンガポールの登録特許、またはASEANでの特許出願を利用することにより、ラオスでの出願から登録までの係属期間を短縮するための、さまざまな手段があります。出願の係属期間を短縮するだけでなく、ラオスDIPはシンガポールの特許調査および審査サービスとの協力関係を活用して、付与する特許の質の向上に努めています。  

この記事は、最初に2019年11月/12月版の「Managing IP」で公開されました。

この記事は最初に2019年12月3日に英語で公開されました


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