ミャンマーの地理的表示法:概要および推奨

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以前、ミャンマーでの新しい商標法を考察しましたが、同じ法律がミャンマーにおける地理的表示(GI)の保護に関する第一義的な法律である点にも注意すべきです。2019年Pyidaungsu Hluttaw法第3号(完全な名称は商標および地理的表示法(TGIL:Trademark and Geographical Indications Law))の16編(第53条~第60条)は、GIのみを取り扱います。この記事は、その内容の概要であると同時にTGILに基づきミャンマーでGI登録に関心を持つ方に宛てた推奨事項でもあります。

GIの定義:TGILにおいて、地理的表示(GI)は、第2条(o)で、「商品が、それらの所定の品質、評判またはその他の特性が本質的にその地理的な起源に帰着可能である場合に、国の領域、またはその領域の中の地域もしくは地方に起源を有することを特定する…表示」と定義されています。

出願する権利:第53条に基づき、天然成分からまたは天然資源を介して誘導される製品並びに手工品または産業製品の製造業者を代表する、政府機関および政府組織を含む法的組織体が、ミャンマーにおいてGIを登録するための出願を申請する地位を与えられます。

出願の要件:GIの登録を申請する際、以下の情報を明確に記載することが必要となります。

  1. 出願人の名称、国籍および住所
  2. 関連GI
  3. 製造の関連地域
  4. GIが適用される製品の説明
  5. 関連GI下にある製品の顕著な特徴、品質または評判
  6. そのような特徴、品質または評判と起源地との関係

拒絶の理由

  1. 対象GIが第2条(o)に基づく定義を満たさない。
  2. GIがミャンマー国内で一般名となったかまたは慣習的な使用の対象となった。
  3. GIが公序または良俗または公共政策に反する。
  4. GIが外国起源である場合、起源国において正当に保護された状態にとどまっていなければならない。

GI登録によって創出される権利

  • 関連GIの下で製品の顕著な特徴、品質または評判を有する製造業者のみがミャンマーにおいてGIを用いることができます。
  • 登録された受益者は次の関連GIの使用を妨げる権限を有します:1)製品の起源について一般公衆を欺くGI、2)不公正な競争を導くGI、または3)不適合製品の製造スタイルまたは方法を表示することを目的とするGI。

公開及び異議申立手続き

  • 承認されたGI出願は異議申立のために公開されますが、その方法および期間は未だ明らかではありません。
  • 異議を申し立てることはできますが、そのための手続きは未だ決定されていません。異議申立がされなければ、GIは登録されます。

GIおよび商標

  • GIの登録後にそのGI下の商品と関連して出願された後続の商標があり、その商品が登録されたGIの標準と適合しない場合、後続の商標出願は拒絶されます。
  • GIの登録より前に登録された商標においては、登録商標の下で申請された商品が後に登録されたGIの標準を満たさない場合、対象商標が善意で出願されたものでない限り、先行の商標は取り消されます。

実施権

  • あらゆる関連GIの適合性について、市場において製品を精査するための管理政府機関が設立される予定であり、そのような規制の費用負担は、登録GIの受益者によって負担される予定です。
  • 登録GIの受益者は、商標権侵害と同じ裁判手続を取ることにより、そのGI権利の侵害に対する訴訟を起こす権利を有します。

注意点および推奨

TGILはまだ施行していませんが、新たな政府機関および施行規則が制定され次第、本法の施行日が設定されると思われます。なお、施行日は2019年第4四半期内であると予測されています。

現段階において、上記概要における規定のいくつかは実務においてどのように実施されるかは不明確なままであり、現在構成中の施行規則が、これらの不明確な点を払拭してくれることが望まれます。GI保護は、ミャンマーにおいてまったく新しい概念であるため、GIの監督責任を有して形成される予定の新たな政府当局は、国際的に一般的とされる実務に沿って規定を適用するとは予測されていません。

最近になってからGI保護を実施し始めたメコン地域管轄権においては、GIと先行登録商標との相互関係がますます懸念されています。TGILは、GIの登録より前に登録された商標においては、登録商標の下で申請された商品が後に登録されたGIの標準を満たさない場合、対象商標が善意で出願されたものでない限り、先行商標は取り消されると明言しています。この点について、商標登録とGI登録の間の相互参照を行うための手続きは不明確です。従って、先行の商標権によって発生する係争を防ぐために、ミャンマーにおいてGI保護を得ることに関心を持つ外国のGI受益者は、TGILが施行され次第速やかに自身のGI出願を行うよう推奨します。TGILの初日は、商標とGIの両方にとっても初日となります。

この記事は“Managing IP”で最初に公開されました。

この記事は最初に2019年7月9日に英語で公開されました


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出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。

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