シンガポールにおける特許付与前第三者情報提供および特許付与後再審査の正式手続き

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シンガポール知的財産庁(IPOS)は、最近シンガポール特許法および規則の一部改正を導入し、それらは2021年10月1日に施行されました。以下に要約するように、これらの改正は主にシンガポールの特許制度の紛争解決プロセスの強化を重視しています。

特許付与前第三者情報提供

IPOSは、新しく付与前第三者情報提供制度を導入しました。これにより、第三者は、出願の公開からその審査報告書発行までの間、いつでも特許出願の特許性に関する情報提供を正式に提出できるようになりました。

この制度の導入前は、第三者情報提供を提出するための正式な手続きが存在せず、情報提供が行われた場合でも、審査官はその情報提供を考慮する義務がありませんでした。現在は手続きが制度化されたことにより、第三者情報提供があれば審査官は出願の審査中にそれらを考慮する義務があります。

第三者情報提供には、出願の特許性の判断に関連し得る先行技術情報の書類および先行技術文献が含まれます。第三者が第三者情報提供を行う際、庁費用は発生しません。第三者情報提供が出願の特許性の判断に影響を及ぼすと審査官が認めた場合、審査官は見解書を発行し、出願人はこの見解書に正式に応答することができます。注目すべきは、情報提供をする第三者は、当該出願の手続きの当事者とはならないことです。

改正規則によると、登録官は第三者情報提供を受領した場合、その旨を書面で出願人に通知します。審査において考慮される第三者情報提供は、特許公開ドシエ(Patents Open Dossier)でも公開されます。したがって、第三者の匿名性を保持するため、シンガポール登録弁理士を介して第三者情報提供を行うこともできます。

興味深いことに、新しい規定によると「発明が特許性のある発明であるかどうかに関する」情報提供が一般的に可能です。ただし、当該出願で補充審査(supplementary examination)が請求された場合、審査官は情報提供の内容が補充審査の少なくとも一つの根拠に関連する場合のみ考慮する義務がある、と改定後の審査基準では記載されています。言い換えると、そのような場合、新規性および進歩性に関する情報提供は考慮されないことになります。

特許付与後再審査

IPOSは、付与後再審査制度を再導入しました。これにより、裁判所または登録官による特許の有効性の判断に関する他の手続きがされていない場合に限り、(特許権者を含む)何人でも付与された特許の再審査を特許付与後いつでも請求できます。この制度の再導入前、最近の特許法では付与後審査は不可能でした。

再審査請求は、付与された特許が無効であるとする理由を述べる必要があり、場合によっては関連する先行技術文献を添付する必要があります。もし、特許の再審査請求があった場合には、その旨が特許権者に通知されます。また、再審査請求に関連する文献は、特許公開ドシエ(Patents Open Dossier)においても公開されます。したがって、請求人の匿名性を保持するため、シンガポール登録弁理士を介して付与後の再審査請求を行うこともできます。

審査官により再審査における申立理由が成立すると認められた場合、見解書が発行されます。この見解書に対して、特許権者は、意見書および/または特許明細書の補正書の提出によって正式に応答できます。特許権者は、見解書の受領後、審査官との面接を請求することもできます。再審査を求める請求者は、自身が特許権者でない限り再審査手続きの当事者とはならず、再審査報告書の発行時に通知されるのみとなります。

興味深いことに、新規定によると、見解書で提起された拒絶理由があり、その1つ以上が再審査報告書において未解決の場合、登録官が特許の取消を命じる義務があります。言い換えると、第三者は、取消手続きを開始せずとも、付与後再審査手続きによって、特許の有効性に異議を申し立てることができます。更に、補充審査ルートで特許が付与された場合、再審査の根拠は、特許付与前の補充審査中に考慮された根拠のみに限定されません。このような場合、例えば、先行技術の引用文献に鑑みて発明が新規性および/または進歩性に欠ける場合は、実体審査の根拠を基に再審査を請求できます。

他方、特許権者は、例えば新しく発見された先行技術に鑑みて付与後の補正および再審査を請求することにより、特許を強化するために付与後再審査を利用できます。また、特許権者は特許が第三者による再審査請求の対象になり、その結果、その特許が完全または部分的に有効であると判断された場合には、有効性が争われたことの証明書を請求することもできます。

第三者情報提供または付与後再審査手続きの利用にご関心がある場合、もしくは追加情報が必要な場合は、どうぞ遠慮なくご相談ください。

この記事は最初に2022年2月3日に英語で公開されました


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