オーストラリア最新情報:知的財産契約書を2019年9月13日(ACCCガイドラインの変更)までに対応させること

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今年7月、弊所はオーストラリア競争・消費者委員会(ACCC:Australian Competition and Consumer Commission)が競争および消費者法(CCACompetition and Consumer Act )の第51条(3)の廃止を受け、知財実施許諾に対する競争法の適用に関するガイドライン草案を公表したことを報告しました。

今回、ACCCは、そのガイドラインを最終版として公開しました。大筋は前回の草案と似ていますが、最終版にはいくつかの注目すべき変更点があります。

  • 今回、ACCCは、競争に対する特定の行動の効果または可能性のある効果を評価する手法として、「あるかないか試験」を含むと説明しています。この試験は、関連する行動が「ある」ときの競争の可能性と関連する行動が「ない」ときの競争の可能性を比較します。重要な点として、この試験においては、「ない」場合の筋書きが、知財実施許諾がまったくない状態(反競争の可能性がある条件がない実施許諾ではない)だと仮定して評価する点です。この試験を適用すると、知財実施許諾は滅多に「実質的な競争の低下」を招きません。なぜなら、制限条件を有するライセンスでさえ、知財実施許諾がまったくない場合より、典型的には知財の実施をより可能にするからです。
  • 他方、知財実施許諾の条件が実施許諾される知財に関連しない場合、適切な「ない」場合の筋書きにおいて、実施許諾のない状態の競争の評価が含まれる可能性は低くなります。関連条件の目的が実施許諾者にとってのなんらかの「付随的な利点」を確保することである場合、実施許諾は「ある」が関連条件は「ない」場合の競争の状態を考慮することが適切な場合があります。
  • ガイドライン草案では、地域制限、価格制限または出荷量制限を含む競争者間の知財実施許諾は、禁止されているカルテル行為に及ぶ可能性があると述べていました。最終版ガイドラインは、そのような制限が不法かどうかを評価する際に、CCAに基づく「目的」および「目的/効果」条件を更に強調しています。
  • この法律分野の複雑さを例示するためかのように、ガイドライン中に提示される筋書き例のいくつかにおいて、ACCCは、問題の行為が不法かどうかに関する立場を変更しています。仮定上の筋書きのひとつとして、使用権者が製造して良い鉄鋼の量が制限された鉄鋼製造会社間の特許実施許諾が例に挙げられます。ガイドライン草案では、これがCCAのカルテル規定に(出荷量制限として)違反する可能性があるだろうと述べていました。しかし、最終版では異なる見解を採用し、使用権者は実施許諾なしで行うことができたであろうよりも多くの鉄鋼(実施許諾された鉄鋼を含む)を供給できるであろうことに基づき、「目的」条件は満たされないとACCCは結論づけています。

第51条(3)の廃止を受け、知財実施許諾の状況においてCCAがどのように解釈されるのかを判断するのは、最終的には裁判所の問題となります。しかし、オーストラリアで知財実施許諾に関与する者にとって、ACCCのガイドラインは、必読となります。

この記事は最初に2019年9月6日に英語で公開されました


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