オーストラリアの意匠制度に対する変更案

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2019年後半に、オーストラリア知的財産諮問審議会(Australian Council on Intellectual Property、ACIP)は、オーストラリアの登録意匠制度の改善案を公募しました。登録意匠は製品の外観を保護するものであり、新規の機器、システムおよびプロセスの機能的側面を保護する特許とは区別されます(最近の記事「オーストラリアの特許と意匠:その違い」をご覧ください)。製品の特定の「見た目」が商業的に重要である場合、登録意匠は有益な保護を提供することができます。

改善案

見直しプロセスの一環として、ACIPは、法令を変更することでメリットが得られる可能性がある、意匠登録プロセスのいくつかの側面を割り出しました。IPオーストラリア(特許、商標および意匠を担当する政府機関)は、さまざまな変更オプションに関する22件の改善案を公募の末受領し、これらの課題に対する回答を公開しています。この回答は、年末までに公開し、一般の意見を募る予定の草案の基礎として使用されることになります。つまり、IPオーストラリアの回答は、オーストラリアの意匠制度に施される変更内容の一部を示していると言えます。

提案された変更案の多くは、主に事務手続きに関するものでしたが、意匠によって提供される保護と出願人がこの制度を利用する方法についての、より抜本的な提案もありました。主要な提案の一部を以下に示します。

製品の部分に対する意匠保護

現在、意匠保護は製品の全体的な外観に関連します。それにもかかわらず、新規性および識別性の記載(Statement of Newness and Distinctiveness、SoND)を使用して、製品の特定の特徴を強調することが可能です。出願人によるこの記載は、製品の1つ以上の部分が重要または特徴的であり、したがって、保護の範囲を決定する際により重視されるべきであると証明するものです。また、図面において製品の一部を点線で示すことにより、その部分を強調しないようにすることも一般的に行われています。

製品の1部分のみに対する意匠登録を可能にするには、法令で「意匠」を新たに定義する必要があります。IPオーストラリアは、このような法令の抜本的改正は、法律と規則全体を通じて、複雑な幅広い変更が必要になると考えています。製品を「代表する」特徴を浮き彫りにする別の仕組みが存在することを踏まえ、IPオーストラリアが「部分的な」製品意匠保護を法案に採用することはないでしょう。

仮想意匠、非物理的意匠および「アクティブ状態」の意匠

これは、画面上の画像などの、「形を持たない」または一過性の意匠に対する意匠保護を指しています。例として、アプリのアイコンやGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)などが挙げられますが、新しいフォント(すなわち活字書体)やホログラム、その他の種類の視覚的投影などもこれに含まれます。

これらの意匠の過去の問題点は、特定の製品に物理的に適用されないということでした。これらの意匠は、一時的または一過性の表現として、多くの異なる製品の表面上に短時間だけ現れます(さらに、ホログラムの場合、製品でさえありません)。したがって、IPオーストラリアは、仮想意匠の実施を許可する可能性がある法令の変更は退けています。ただし、IPオーストラリアが今後も引き続き仮想意匠を許可し、登録するという点は注目に値します。ただし問題は、登録意匠はそれが「認定される」(すなわち、審査される)まで、競合相手に対して執行できないことです。現時点で意匠庁は、画面上のアイコンまたはGUIに対しては、製品に適用される「意匠」の定義から外れているとして異議を唱える可能性が高いです。

公の開示後の意匠出願の「猶予期間」

有効な意匠登録は、「新規」である必要があります。つまり、意匠を公に開示する前に出願を行う必要があることを意味します。「猶予期間」は、意匠創作者が意匠を不注意で開示してしまった場合でも、有効な意匠保護を受けられるようにします。猶予期間を6か月とするか12か月とするか、さらにその猶予期間をオーストラリア意匠の出願日の直前とするか、場所を問わず最先の意匠出願の直前とするかについて、意見が提出されました。IPオーストラリアは、最先の意匠出願(現地出願または外国出願)以前の12か月を猶予期間とすることを選択しました。

意匠の公告繰り延べ

現在、登録された意匠はIPオーストラリアによって公開されます。しかし、一部の意匠創作者は、製品を市場に投入するまで、意匠の機密性を保つことを望む場合があります。この公告繰り延べの選択肢は他の国では利用可能であり、この変更案は公募意見でも強い支持を得ました。

オーストラリアでは、意匠は比較的迅速に登録まで進むため、この早期公告は、一部の意匠創作者、特に自動車産業の意匠創作者、にとって阻害要因となっていました。出願人によっては、出願に意図的に不備を組み込むことで補正通知を発行させ、それにより登録/公告を数ヶ月遅らせることもあります。

IPオーストラリアは、意匠公告の繰り延べが市場において他社に不確実さをもたらすという懸念を示してはいるものの、出願から6か月が経つと自動的に登録(ひいては公告)されるという条項を追加することには同意しています。

草案

IPオーストラリアが、公募意見で高く支持されている変更案のいくつかを承認したことは喜ばしいことです。登録意匠が意匠創作者にとってより身近なものとなり、利用しやすくなれば、企業が意匠制度を活用して製品をより確実に保護できる可能性が高まります。ただし、詳細に落とし穴があるのはすべての法令と同様です。IPオーストラリアが草案を発表し、新しい条項に関する詳細が明らかになるまで待つことになります。

この記事は最初に2020年8月20日に英語で公開されました


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