説明的な結合商標 – その価値は?

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ほとんどの商標は、簡単な文字、デバイス(イメージ)、またはそれら2つの結合のいずれかで構成されます。

  • (a) プレーン・ワード・マーク:通常あらゆるフォント・色・様式の文字を保護するため、一般的に最も幅広い保護が得られます。
  • (b) デバイス・マーク:画像またはグラフィックスのみで構成された商標で、文字がありません。通常、デバイス・マークは非常に特徴的であり、多くの場合、ワード・マークよりも登録が簡単です。
  • (c) コンポジット・マーク(結合商標):グラフィックスと文字の両方の組み合わせで構成されます。

「どのタイプの商標を出願すればよいか?」というのは非常によくお問い合わせいただくご質問の1つです。

企業は頻繁に3つのタイプの商標全てを使用します。例として、ワード・マークがその企業の中心ブランドを形成し、パッケージやウェブサイト、プロモーションおよびマーケティング素材では、デバイス・マークも顕著に利用される場合です。時には、2つを組み合わせた結合商標を用いる場合もあります。

使われる商標の3つのバージョン全てを権利化することで、最大の保護が得られます。しかし、費用が問題となる場合(特に多数の区分や国に出願する場合)は、優先順位をつけることが必要になることがあります。

一般的には、プレーン・ワード・マークを最優先に保護することが推奨されます。しかし、そのプレーン・ワード・マークが、企業が提供する商品やサービスを説明的に表現するものである場合、商標の登録は大変難しいものとなる可能性があります。これはすべての業者が同じ或いは類似する説明的な表現を自身の商品やサービスについて使用できるよう、法律により配慮されているからです。

例えば、商標庁は、「Chips」に関連した「Potato Chips」という文字の出願は受理しないと考えられます。ポテトチップスを販売する全ての業者が、真にこの文字を使用する必要があるからです。なお、説明的な標章のすべてがこれほど自明であるわけではありません(説明的な単語、地名ならびによくある頭字語などへの当て字や、様式化されたフォントや枠線が使われた説明的な文字など)。いくつかの標章は事実上登録が不可能(Potato Chipsが良い例です)ですが、その一方、時間をかけて、特徴的であり登録可能であるという評価を得た商標もあると考えられます。

ワード・マークのみの商標登録が難しい場合、説明的な文字やフレーズに特徴的な文字およびまたはグラフィック要素を追加し組み合わせた、結合商標の出願を選択することも可能です。これは多くの場合、商標庁の拒絶を避けるためには望ましい方策なのですが、そういった結合商標の登録によって得られる権利は、プレーン・ワード・マークで得られる権利に比べ限定されますので、その認識が大変重要になります。

特に、結合商標は、その商標のすべての特徴を考慮し、商標全体としての保護が付与されます。つまり、説明的な文字を含んだ結合商標の登録では、所有者が説明的な文字そのものに対する独占的な権利を取得し難いことを意味します。反対に、非常に特徴的な言葉を含む結合商標では、その特徴的な言葉に対して少なくともある程度の保護を受けられる可能性があります。

「Potato Chips」の例に戻りますが、オーストラリアでは以下の結合商標が登録されています:

商標番号 商標 指定商品
1255980 区分29:ポテトチップス
1740496 区分29:ポテトクリスプ
1382987 Shannon’s Potato Chips 区分29:チップス(フライドポテト)
1715974 区分29:ポテトクリスプとチップス

しかし、「Potato Chips」という言葉が丸ごとそれぞれの商標に組み込まれていたとしても、所有者は、その登録を用いて他の業者が「Potato Chips」という言葉を自身の商標の一部として使用することを阻止することはできないと思われます。一般的に、商標を全体で考慮した場合、欺瞞的に類似しているものを使用している第三者に対してのみ措置を講じることが可能だからです。

また、商標は他者が類似の標章を「商標」として使用することを阻止するためにのみ利用可能であることへの理解も重要となります。一般的には特定の文字を純粋に説明的な意味で使用する場合、商標侵害とはみなされません。

なお、この問題は、オーストラリア連邦裁判所の判決で議論されました(Lift Shop Pty Ltd v Easy Living Home Elevators Pty Ltd [2014] FCAFC 75(英語))。この判例では、Easy Home Elevators Pty Ltdによる検索エンジン最適化においての「Lift Shop」という文字の使用が、Lift Shop Pty Ltdが所有する以下の商標登録を侵害したかどうかが検討されました:

法廷では、「Lift Shop」という言葉は、両者がそれぞれ運営する事業の種類を説明する説明的な文字であるとされました。結論として、Easy Home Elevators Pty Ltdは、説明的な意味で「Lift Shop」を使用し、商標としての使用(これは商標侵害を成立させるための要件となります)ではなかったとされました。

以上を踏まえて、Easy Home Elevators Pty Ltdによる「Lift Shop」の使用は、Lift Shop Pty Ltdが所有する結合商標(上記記載)を侵害しないと判断されました。

上記のような場合があるものの、結合商標の出願には依然として以下のようなメリットが存在します:

  • (a) 同じまたは類似の商標を採用したいと考える他業者への抑止力となり得ます;
  • (b) 他業者が、同じ文字や自身の結合商標を登録しようとする際にその障害として機能することで、プレースホルダーとしての位置を効果的に確保できます。説明的なワード・マークを使用する企業は、後日、商標がその市場において特徴的なものとなったため登録の権利があると主張する証拠とともに、ワード・マークの商標出願を行える可能性があります。

結合商標に関してご質問・ご不明な点などがありましたら、弊所までどうぞお気軽にお問い合わせください。

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