オーストラリア特許局長は、最近弊所で言及した医薬特許の存続期間延長(PTE)に関連するOno Pharmaceutical Co, Ltd v Commissioner of Patents [2021] FCA 643 (「小野薬品」)の連邦裁判所の判決に対して上訴しました。
控訴が進行している間、オーストラリア特許庁(APO)は、実務の更新を発表しました。小野薬品の判決に照らして、オーストラリア特許審査官マニュアルの第3.12.1.8節、第3.12.2.1節、および第3.12.2.2節が、医薬特許の存続期間延長の申請書とともに更新されました。
マニュアルの第3.12.1.8節には、「第70条、第71条、第77条の目的で(つまり、特許の存続期間延長 (PTE) 申請の目的で)関連する製品は、他人および競合他社のものではなく、特許権者のものである」とあり、「特許権者がスポンサーでない場合、特許権者は、存続期間延長の申請を行う際に、ARTG(オーストラリア治療製品登録簿)への登録の申請が特許権者の同意を得て行われたことを確認する必要がある」と、記載されています。
したがって、更新されたPTE申請書には、「ARTGに含まれる製品のスポンサーが特許権者でない場合、ARTGへの登録申請は特許権者の同意を得て行われたか」という新しい質問が含まれており、特許権者による、または特許権者の同意を得た申請後のARTGに含まれる製品に関連する「最初の規制上の承認日」および「最も早い最初の規制上の承認日」に関する質問が続いて含まれます。
マニュアルの第3.12.1.8節には、小野薬品事件の簡単な要約も含まれており、「裁判所は、特許権者は第70条([134]、[174])目的の物質として指名する製品を選択することはできないという立場を受け入れた」と記載されています。
APOによる更新の文言、および更新されたマニュアルと申請書から判断すると、APOは「PTEがオーストラリア治療製品登録簿(ARTG)に登録された特許権者の製品に基づく場合はあるが、無関係の第三者の製品に基づくことはできない」と決定したものと、小野薬品の判決を解釈したようです。
小野薬品判決のこの解釈が正しいかどうかは、まだ分かりません。別の可能性として、この判決では、PTEがそれが特許権者自身の製品であるか第三者の製品であるかにかかわらず、特許権者によって指名されたいかなるARTG登録製品(ただし、その製品は一つ以上のクレームの範囲内であり、完全明細書で実質的に開示されている)に基づくことができる、と解釈することもできるからですi。
控訴は今後6~12か月以内に審理されると予想されますが、その後、控訴の判決が下るまでにさらに6~12か月かかる場合があります。当面の間、PTE申請の際にその申請がARTGに登録されている製品が特許権者とは関係のない第三者の商品に基づいている場合、APOはPTEの付与を拒絶するものとみられます。さらに、PTE申請者がARTGに登録された関連製品のスポンサーではない場合、APOは、その製品のARTG登録の申請が特許権者の同意を得て行われたという回答を裏付ける証拠を要求する可能性もあります。
オーストラリアのPTE条項に関してさらなる明確性が提供されるとみられるため、上訴の結果に期待がかかります。判決が出ましたら、引き続き、最新情報をお届けします。
この記事は最初に2020年7月16日に英語で公開されました
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i Ono Pharmaceutical Co. Ltd v Commissioner of Patents [2021] FCA 643 [96]-[97] and [134].