判例研究: H Lundbeck A/S & Anor v Sandoz Pty Ltd

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オーストラリア連邦裁判所 [1] は、最近の判決で、たとえジェネリック企業が関連特許の標準の特許期間が満了した後に医薬品の発売を開始しても、特許期間が延長される可能性が依然として存在する環境下では、後日特許期間の延長が認められた場合に重大なリスクが伴い得ることを示しました。

背景

H Lundbeck A/S(以下、ルンドベックA/S [2])は、抗うつ薬であるレクサプロの有効成分であるエスシタロプラムに関するオーストラリア特許No. 623144(以下、レクサプロ特許)の特許権者でした。また、Lundbeck Australia Pty Ltd(以下、ルンドベックAU)はレクサプロ特許の実施権者として、オーストラリアにおけるレクサプロのスポンサーでもありました。そしてルンドベックAUの子会社であるCNS Pharmaは、2009年半ばからルンドベックのジェネリック製品であるエスシタロプラム(エシプラム)を販売していました。

レクサプロ特許は特許期間延長を申請するために、ルンドベックA/Sの出願において膨大な手続きを必要としました。H Lundbeck A/S v Alphapharm Pty Ltd [2009] FCAFC 70の、最初の大法廷の判決で、主張されていた特許期間の延長 [3] が(その時点で)無効とされ特許が失効となったため、Sandoz Pty(以下、サンド)などのジェネリック企業が、オーストラリアでのエスシタロプラムのジェネリック版の販売を開始しました。しかし、その後の2回目の大法廷判決(Aspen Pharma Pty Ltd v H Lundbeck A/S [2013] FCAFC 129)などでのさらなる討議の結果、2014年に、長官はレクサプロ特許において2012年12月9日までの特許期間の延長を認めました。この判決を不服とする一連の上訴は、最終的にAlphapharm Pty Ltd v H Lundbeck A / S [2015] FCAFC 138を含め、敗訴に終わりました。

上記の特許期間延長の承認からすぐに、ルンドベックA/SとルンドベックAU(以下、総してルンドベック)は、Alphapharm、Apotex、Aspen、およびサンド、それぞれに対して2009年6月半ばから2012年12月9日までの間のレクサプロのジェネリック製品の販売に関する侵害訴訟を起こしました。最終的に、ルンドベックはサンド以外のすべての関係者と和解しました。

判決

サンドはレクサプロ特許の有効性には異議を唱えなかったものの、いくつかの根拠に基づいて非侵害を主張しました。しかし、それぞれの主張は拒絶されました(本記事の目的と異なりますのでこれについてはこれ以上言及致しません)。

サンドがレクサプロ特許を侵害し、サンドによる抗弁が立証されず、かつルンドベックの追加の損害賠償請求には「説得力がない」ことを受け、Jagot判事は損害についての査定を行いました。判事はまず、売上の損失に基づいた損害には、侵害行為がなかった場合に特許権者が販売したであろう価格での販売機会の損失を考慮しました。サンドによる侵害がなかった場合、という事実とは異なる仮説に伴う「reference to the degree of probabilities or possibilities(確率または可能性の程度の照合)」による査定が行われました。次に判事は、損害賠償額に関し以下の事項を含めていくつかの問題点の検討を行いました。

1:1の置き換え

ルンドベックの損害請求は、サンドのエスシタロプラム製品の売り上げ全てが、(より安価な)エシプラム製品の無販売の結果であるという前提に基づいたものでした [4] 。判事は最初、1:1での置き換えで検討を行っていましたが、2009年半ば当時の市場には、複数のエスシタロプラムのジェネリック製品が存在しており、サンドの売り上げの一部は他のジェネリック企業によるものであった可能性があったため、サンドに対して減額が行われるべきだと指摘しました。サンドによる売り上げの全てはルンドベックの損失と必ずしも一致していないという理由から、判事は、25%の減額を施しました。

CNS Pharmaが被った損失

CNS Pharmaはエシプラム製品のスポンサーではありましたが、レクサプロ特許の特許権者でも独占的な実施権者でもなかったために、特許侵害による損害賠償を請求することはできません(行いません)でした。しかし、CNS Pharmaの販売損失は、グループ間送金を介して最終的にルンドベックA/Sへ振り込まれる金額の減少を意味したため、ルンドベックA/Sによる請求の対象となりました。このグループ間送金は、CNS Pharama(および同様の取り決めの対象であるルンドベックAU)に、売上高の3%の収益がもたらされるよう設計されていました。なお、関連売り上げの大部分は、エスシタロプラムによるものでした。これを踏まえ、会計の専門家は、サンドによる特許侵害がなかった場合、子会社が3%の収益を確保するために必要とされる調整は違うものとなっていただろうことに同意しました。

判事は、ルンドベックA/SとルンドベックAUが主張する損失額の請求に二重申請の可能性がある限り、ルンドベックA/Sが主張する損失の方が損害賠償の裁定として優勢であり、サンドによる侵害がなかった場合の状況を最もよく反映していると判断しました。

諸経費

損害賠償の算出の一環として、間接諸経費への影響も検討されました。最終的にルンドベックは、被った全体的な損失から4,875万1千ドルが減額されるべきであると主張しました。サンドは、この数字は6,292万4千ドルから6,655万7千ドルの間となるべきであると主張しました。Jagot判事は、どのジェネリック企業も市場に参入する前にすでに作成されていたルンドベックの2009/2010年度予算がサンドの専門家により「不合理」に拒絶されていた点等を含めたいくつかの理由を挙げ、考察のための出発点として、ルンドベックの間接諸経費案の方が妥当だとしました。侵害がなければ間接諸経費に影響を及ぼすような重大な構造変化が業界に生じたであろう、とするサンドの主張も正当な根拠がないとされました。エスシタロプラムの売り上げの成長は過去にルンドベックにより組織的に処理されており、侵害がない状況下では成長の処理の方法が異なる、という仮定が成立する根拠がなかったからです。

間接諸経費の問題にかかわらず、判事は構造的変化が起こったかもしれないリスクを考慮して損害賠償額をさらに5%減額し、上記の置き換えの問題において施された減額と合わせて合計で30%差し引く裁定を下しました。

オリジナルのレクサプロが大ヒット薬品だったことを考えれば、減額があったとはいえサンドが支払う損害額は著しいものになると思われます。


[1] H. Lundbeck A/S v Sandoz Pty Ltd [2018] FCA 1797

[2] 判決文中ではルンドベックDNとの記載もあり。

[3] 二者択一で、2012年12月9日までか2014年6月13日までのいずれか。

[4] ルンドベックは、販売損失が安価なエシプラムのみに対する損失で、レクサプロとエシプラムの組み合わせに対する損失ではないとし、主張を簡略化させた。


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