タイを指定国とする国際登録の審査

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タイ知的財産省(DIP)は、標章の国際登録に関するマドリード協定に関する議定書(マドリード議定書)に基づいて2017年11月7日に国際商標出願を受け入れ始めました。2015年のタイ商標法の改正によりタイを指定した国際登録のための審査方法が全体的に定められていますが、いくつかの実務において明確ではない点が存在しました。DIPによるマドリード議定書の下での出願の実体審査がおよそ2年経過した今、弊所はこれらの問題に更なる光をあてることができます。

出願人詳細の翻訳

DIPがWIPOから国際出願を受け入れる際、DIPは出願人に関係するすべての詳細な事項をタイ語に翻訳し、国際登録番号とは異なるタイ商標出願番号を割り当てる責任を負います。この段階における出願人の詳細についてのDIPの翻訳は、通常の翻訳および音訳の規則に基づき行われますが、整合性は考慮されません。従って、例えばDIPによって翻訳された出願人の名前は、同じ出願人によるマドリード出願であってもDIPが受け入れる度に変わることがあり得ます。さらに、この段階から登録証の交付まで、DIPに提出されるすべての書類は出願人の詳細を英語で表記する必要がありますが、これらのマドリード出願のDIPでの記録はタイ語となります。

重要な点は、商標についてのDIPの類似性審査が各標章の所有者の特定に集中するため、商標の所有者のタイ語での名前の表記が以前の出願と少しでも違っている場合には、同じ所有者の以前の標章と類似している標章には類似性拒絶が出されることが多くあるということです。言い換えますと、所有者の名前にコンマがひとつ表記されていないだけで自身の標章が引用されてしまい、それにに対して商標所有者は商標委員会に申し立てしなければならないことになる可能性があります。この問題は、タイ語の出願人の名前をタイにおけるすべての出願において一致させる補正を提出することにより、避けることができます。

商品/役務のリストの翻訳

WIPOから新しい出願を受け入れる際、DIPは、クレームされている商品/役務のリストのタイ語翻訳を準備する責任を負います。商品/役務の明細書の審査はそのタイ語翻訳に基づいて行われます。明細書は、DIPがニース分類(第11版)を参照して作成した、一般的に受け入れられている商品/役務の明細書のデータベースと対比して審査されます。商品/役務の明細書に補正が施される場合、DIPが提案する補正を含む仮拒絶が英語で発行されます。

上記プロセスには、DIPが1)商品/役務の明細書を英語からタイ語に翻訳し、2)翻訳された明細書をDIPのデータベースに沿ったものにし、3)沿わない明細書があれば訂正のための修正案を検討し、4)その提案を英語に翻訳することが含まれます。手順が複雑なため、DIPにより提案された補正が、出願人が当初求めた保護の範囲を有する最初の明細書に比べると、著しく違ってしまう可能性があります。この場合におけるDIPの提案は善意によるものかもしれませんが、そのまま従ってしまうと希望の保護の範囲を歪める可能性が出てきます

オフィスアクション応答期限計算

商標法およびそれに伴う省規則によると、DIPが発行したオフィス・アクションに応答する期限はそのオフィス・アクションを受け取った日から60日に設定されています。しかし、実際には、この規定は、出願人に発行されたDIPからのいずれの通知も、通知発送日の30日後に受け取られたものとみなす規則とともに自動的に実施されます。よってこの慣行によると、常にすべてのオフィス・アクションの応答期限は結果的にDIPがそのオフィス・アクションをWIPOに提出した日から90日と計算されます。

上記の議論で示しました通り、マドリード議定書による出願のタイDIPの審査のための法律、規則等の外面的な単純さは、それらの実施の複雑さによって不条理なものとなっています。国際出願においてタイを指定国とするのは簡単なことですが、時が来たときには現地の商標代理人の注意深い助言を求めるのがタイDIPの慣行を辿って行くためには賢明となるかもしれません。

この記事は最初に2019年8月27日に英語で公開されました


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