シンガポールにおけるIP発展のための10年計画

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2021年4月26日、シンガポール政府は、無形資産・知財投資により企業にとってグローバルハブとしてのシンガポールの立場を維持するための、継続的かつ将来に向けた取り組みを示す計画を発表しました。

シンガポール政府は、2021年4月26日の世界知的所有権の日(World IP day)に合わせて、「シンガポール知的財産戦略2030(Singapore Intellectual Property Strategy 2030、略して SIPS 2030)」と命名された10年計画を発表しました。SIPS 2030は、無形資産(IA)と知的財産(IP)のグローバルハブとしてのシンガポールの立場に貢献することを目指しています。

SIPS 2030は、2013年の初回発行を経て2017年に改定されたIPハブマスタープラン(IP Hub Master Plan)に基づいています。IPハブマスタープランの代表的な業績としては、商標登録のための世界初のモバイルアプリである「IPOS Go」の立ち上げ、地域のIP専門知識の共有を広げるためのIP教育プログラムの立ち上げ、そしてジュネーブにある世界知的所有権機関(WIPO)本部以外では唯一となるWIPO仲裁調停センターの発展などがあります。

シンガポールは、SIPS 2030において技術、とりわけビッグデータ、人工知能、ブロックチェーンなどの新興分野の進歩をサポートするために、政策を積極的に見直すことを目指しています。この見直しの一環として、シンガポール知的財産庁(IPOS)は、シンガポールマネージメント大学(SMU)の人工知能およびデータガバナンスセンター(Centre for AI and Data Governance)および情報通信メディア開発庁(Infocomm Media Development Authority)と共に、主要な関係者からの意見を収集するための共同研究に着手しました。

加えて、グローバル・アジアの中心というシンガポールの立場をさらに強化する目的もあります。IPOSは、米国、欧州、中国、日本、韓国(一般的にIP5、五大特許庁会合と呼ばれる)と特許審査ハイウェイ(PPH)の協定を締結しています。さらに、9つのASEAN加盟国、メキシコ、ブラジル、および20以上のグローバルPPHネットワーク参加国など、世界全体で30以上の知的財産の流通市場とも接点があります。

別の観点から見ると、シンガポールは政府一体としてのタッチポイントを活用して、無形資産・知財顧問サービスや無形資産・知財関連サービスの企業の利用を増やしていきます。一例として、企業がそのビジネスジャーニーを通じて無形資産・知財に関する課題を特定できるよう支援し、適切な無形資産・知財サービスの提供者および解決に結びつけるため、「IP Grow」と命名された企業を中心に据えたオンラインプラットフォームを作成する予定です。このプラットフォームを介して、シンガポール国内外を問わず、イノベーションエコシステム全体にわたって無形資産・知財関連の専門家のネットワークが構築されることになります。

さらに、シンガポールはSIPS 2030によって企業が自社の無形資産・知財から最大限の価値を引き出せるようサポートします。すぐに利用できる技術や無形資産・知財を企業の役に立たせ、企業の無形資産・知財取引を促進するため、SIPS 2030に基づく無形資産・知財および技術プラットフォームを確立します。シンガポールは無形資産・知財取引に関係するデータを積極的に集め、透明性の向上にも努める予定です。中小企業(SME)を支援するため、シンガポールは銀行やベンチャーファンドなどと協力して、無形資産・知財の価値の増価と査定を推進していきます。これにはイノベーション主導のビジネスの資金調達に伴う潜在的リスクと利益がより的確に反映される予定です。一例として、シンガポールは無形資産・知財の査定をさまざまな企業向け融資スキームに組み込み、資本調達のデューデリジェンスプロセスを支援することを検討しています。

想定されるイノベーションエコシステムを補完するため、シンガポールは関連する無形資産・知財の査定に関する実務基準やガイドラインを施行する予定です。その基準やガイドラインが国際的に広く採用されるように、無形資産・知財の査定に関する国際的な委員団の先頭に立つ予定です。さらに、IPOSは会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority略してACRA)および民間団体と協力して、シンガポールの企業が自社の無形資産・知財の価値を伝えることを支援する、無形資産・知財開示のための効果的なフレームワークを展開する予定です。

SIPS 2030がスムーズに実施されるための追加対策として、シンガポールは無形資産・知財の管理能力を持つ有能な人材を育成し、企業が自社の無形資産・知財を管理し、そこから価値を引き出し、ビジネスチャンスをつかむことができるよう支援します。無形資産・知財に関係する新しいトレーニングプログラムを継続的に作成し、無形資産・知財の管理における国際基準を策定します。

世界全体の無形資産の価値は65.7兆USドルと過去最高額を記録しました。SIPS 2030は、シンガポールが企業にとって自社の無形資産・知財の保護、管理、取引を実行するのに適した環境となるようサポートしていきます。

この記事は最初に2021年6月15日に英語で公開されました


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