オーストラリアにおける仮想商品およびNFTの商標分類
NFT、実世界の製品および商標庁実務との複雑な関係に関する弊所の最近の記事に引き続き、2023年8月10日、IPオーストラリア(旧称・オーストラリア知的財産庁)は、NFTおよび仮想商品を含む先端技術の商標分類に関する新しいガイダンスを発表しました。仮想商品、NFTおよびブロックチェーン技術について商標登録を求めることに関し、IPオーストラリアは、以下の指針を規定しました。
NFT、実世界の製品および商標庁実務との複雑な関係に関する弊所の最近の記事に引き続き、2023年8月10日、IPオーストラリア(旧称・オーストラリア知的財産庁)は、NFTおよび仮想商品を含む先端技術の商標分類に関する新しいガイダンスを発表しました。仮想商品、NFTおよびブロックチェーン技術について商標登録を求めることに関し、IPオーストラリアは、以下の指針を規定しました。
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あなたのブランドにフリーキックはありません―FIFA女子ワールドカップ期間中のブランドオーナーのためのガイド
FIFA女子ワールドカップ®が主催国オーストラリアおよびニュージーランドで公式に開催中であり、視聴者数は地球規模で20億人に達すると予測されます。 それほど多くの眼が同じ方向に向けられますと、もちろんブランドオーナーにとってスポットライトの取り分を得る魅惑的な機会があります。しかし、誰もがスタジアムの門に自らのロゴを塗り始める前に、どのマーケティング戦略が問題無いのか、どれがトラブルへの暴走、スパイク上向き行為なのか時間をかけて考える価値があります。 以下は、このFIFA女子ワールドカップ®期間中にブランドオーナーがファールをせずにマーケティングゴールを獲得する助けとなる簡単なガイド(あまりウケない言葉遊びを軽く散りばめました)です。 考えるべき最初の問題は、FIFA女子ワールドカップ®がパートナー、サポーターおよびスポンサーの形で一連の公式アフィリエイト(affiliates)を有することです。これらのアフィリエイトは、典型的に、ワールドカップとのパートナーシップにおいて自らのブランディングをどのように用いることができるかについて特別な権利を与えられる協定を結んでいます。アフィリエイトは、もちろん、いかなる不当な影響からも自らの投資を安全に保ち、自らの独占権を確保するために強いバックラインを設定する権益を有します。 自らのブランドを(協定によって)FIFA女子ワールドカップ®と結びつける立場にないブランドオーナーは、故意にまたはうっかりFIFA®の知的財産を使用したり、自らをFIFA®またはワールドカップのアフィリエイトとして振る舞わないように注意しなければなりません。そんなことをする当事者は、多くの場合に『待ち伏せマーケティング』といわれるファールを犯した廉で有罪になることがあります。 待ち伏せマーケティングは、公式スポンサーシップ協定を結ばないまま、人気のあるイベントによって発生する宣伝および注目を利用することを含みます。これは、公式スポンサーシップの財政的重荷を負うことなくイベントに関連する個人による巧妙な広告キャンペーンまたはブランド是認などの様々な手段によって実現することができます。 待ち伏せマーケティングの行為は、微妙または公然になり得ます。有名な例として、南アフリカにおける2010FIFA男子ワールドカップ®でオランダ人ファンの一団に対し、FIFA®当局者がライセンスを結んでいないビールブランドを促進するためにオレンジの衣装を着ていたとして非難し、オランダ対デンマークの試合から排除したことがあります。この事例では、待ち伏せマーケティングには主観性の要素があることを強調します。つまりマーケティングに関しては用心深く、ルールを守ってプレーする理由となります。 ペナルティーを生む結果となる可能性のある、それほど派手でない問題行為は他にも例として、試合中のスタジアムの内外における無許可の路上売買、またはFIFA®または女子ワールドカップロゴおよび標章の近くに営利目的で注意を惹くために自身のブランドの画像をオンライン掲示すること、などを含みます。 営利目的で別の企業のブランディングを無許可で使用することは、多くの場合に商標侵害の明確な事例を構成します。しかし、FIFA女子ワールドカップ®の間、イベント主催者には追加の保護層があります。メジャーイベントマネージメント(FIFA女子ワールドカップオーストラリアおよびニュージーランド2023)法令2022は、FIFA女子ワールドカップ®が『メジャーイベント』であると宣言しました。『メジャーイベント』に関する法律は、オーストラリアにおいては州および特別地域によって支配され、ニュージーランドにおけるメジャーイベントは、メジャーイベントマネージメント法2007によって支配されます。これらの法律は、一般に、関連当局の同意のないメジャーイベントの公式名称または公式標章の営利目的での使用を明示的に禁止する規定を含んでいます。 しかし、グラウンドがちょっとデコボコしているからといってブランドオーナーが試合を放棄することはありません。レフェリーに笛を吹かれないでFIFA女子ワールドカップ®を称えるたくさんの方法があります。FIFA®は、FIFA®知的財産を組み込まないジェネリックなサッカーまたは国に関連する画像および/または用語を使用することを勧めています。ブランドオーナーは、これを柔軟に考え、試合または特定の国を応援することを示す賢い方法を発明できる機会として見ることができます。自身のブランドをイベントのパートナーとしてではなく、興奮をシェアする試合のファンとして取り扱いましょう。 あなたのマーケティング戦略がトラブルの元になるかどうかに少しでも疑いがあるなら、わたしたちの知的財産専門家チームにご連絡ください。喜んでお手伝いします。 そんなわけで…それゆけ、サッカーオーストラリア女子代表のMatildas! この記事は最初に2023年7月28日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
FIFA女子ワールドカップ®が主催国オーストラリアおよびニュージーランドで公式に開催中であり、視聴者数は地球規模で20億人に達すると予測されます。 それほど多くの眼が同じ方向に向けられますと、もちろんブランドオーナーにとってスポットライトの取り分を得る魅惑的な機会があります。しかし、誰もがスタジアムの門に自らのロゴを塗り始める前に、どのマーケティング戦略が問題無いのか、どれがトラブルへの暴走、スパイク上向き行為なのか時間をかけて考える価値があります。 以下は、このFIFA女子ワールドカップ®期間中にブランドオーナーがファールをせずにマーケティングゴールを獲得する助けとなる簡単なガイド(あまりウケない言葉遊びを軽く散りばめました)です。 考えるべき最初の問題は、FIFA女子ワールドカップ®がパートナー、サポーターおよびスポンサーの形で一連の公式アフィリエイト(affiliates)を有することです。これらのアフィリエイトは、典型的に、ワールドカップとのパートナーシップにおいて自らのブランディングをどのように用いることができるかについて特別な権利を与えられる協定を結んでいます。アフィリエイトは、もちろん、いかなる不当な影響からも自らの投資を安全に保ち、自らの独占権を確保するために強いバックラインを設定する権益を有します。 自らのブランドを(協定によって)FIFA女子ワールドカップ®と結びつける立場にないブランドオーナーは、故意にまたはうっかりFIFA®の知的財産を使用したり、自らをFIFA®またはワールドカップのアフィリエイトとして振る舞わないように注意しなければなりません。そんなことをする当事者は、多くの場合に『待ち伏せマーケティング』といわれるファールを犯した廉で有罪になることがあります。 待ち伏せマーケティングは、公式スポンサーシップ協定を結ばないまま、人気のあるイベントによって発生する宣伝および注目を利用することを含みます。これは、公式スポンサーシップの財政的重荷を負うことなくイベントに関連する個人による巧妙な広告キャンペーンまたはブランド是認などの様々な手段によって実現することができます。 待ち伏せマーケティングの行為は、微妙または公然になり得ます。有名な例として、南アフリカにおける2010FIFA男子ワールドカップ®でオランダ人ファンの一団に対し、FIFA®当局者がライセンスを結んでいないビールブランドを促進するためにオレンジの衣装を着ていたとして非難し、オランダ対デンマークの試合から排除したことがあります。この事例では、待ち伏せマーケティングには主観性の要素があることを強調します。つまりマーケティングに関しては用心深く、ルールを守ってプレーする理由となります。 ペナルティーを生む結果となる可能性のある、それほど派手でない問題行為は他にも例として、試合中のスタジアムの内外における無許可の路上売買、またはFIFA®または女子ワールドカップロゴおよび標章の近くに営利目的で注意を惹くために自身のブランドの画像をオンライン掲示すること、などを含みます。 営利目的で別の企業のブランディングを無許可で使用することは、多くの場合に商標侵害の明確な事例を構成します。しかし、FIFA女子ワールドカップ®の間、イベント主催者には追加の保護層があります。メジャーイベントマネージメント(FIFA女子ワールドカップオーストラリアおよびニュージーランド2023)法令2022は、FIFA女子ワールドカップ®が『メジャーイベント』であると宣言しました。『メジャーイベント』に関する法律は、オーストラリアにおいては州および特別地域によって支配され、ニュージーランドにおけるメジャーイベントは、メジャーイベントマネージメント法2007によって支配されます。これらの法律は、一般に、関連当局の同意のないメジャーイベントの公式名称または公式標章の営利目的での使用を明示的に禁止する規定を含んでいます。 しかし、グラウンドがちょっとデコボコしているからといってブランドオーナーが試合を放棄することはありません。レフェリーに笛を吹かれないでFIFA女子ワールドカップ®を称えるたくさんの方法があります。FIFA®は、FIFA®知的財産を組み込まないジェネリックなサッカーまたは国に関連する画像および/または用語を使用することを勧めています。ブランドオーナーは、これを柔軟に考え、試合または特定の国を応援することを示す賢い方法を発明できる機会として見ることができます。自身のブランドをイベントのパートナーとしてではなく、興奮をシェアする試合のファンとして取り扱いましょう。 あなたのマーケティング戦略がトラブルの元になるかどうかに少しでも疑いがあるなら、わたしたちの知的財産専門家チームにご連絡ください。喜んでお手伝いします。 そんなわけで…それゆけ、サッカーオーストラリア女子代表のMatildas! この記事は最初に2023年7月28日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
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重要なCRISPR特許上訴でのTOOLGENの失敗
オーストラリア連邦裁判所は、オーストラリアの重要なCRISPR特許紛争において判決を下し、ToolGen社の特許出願において土台となるCRISPR技術についてのクレームは何れも有効でないと判断しました。この訴訟は、第1の被告-グラント・フィッシャーという名の名目上の関係者-がToolGenの出願への特許権付与に対する異議申立に成功したとする特許庁長官の決定に端を発する上訴です。 特許出願 本件は、CRISPR/Casシステムおよび真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的二本鎖切断を導入するそれらのシステムの使用に関するToolGenの出願に関するものでした。 この出願は、2013年10月23日に出願され、3件の仮出願からの優先権を主張しています。 2012年10月23日出願の米国特許仮出願第61/717,324号(「P1」); 2013年3月20日出願の米国特許仮出願第61/803,599号(「P2」);および 2013年6月20日出願の米国特許仮出願第61/837,481号(「P3」)。 この出願は、2つの独立クレームを含みます。 クレーム1. 真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断を導入する際に使用されるII型クラスター化規則的間隔配置短鎖回文繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)/Casシステムを含み、前記CRISPR/Casシステムは、(i)核局在化配列を含むCas9ポリペプチドをコードする核酸と、(ii)標的核酸に交雑するガイドRNAをコードする核酸と、を含む組成物であって、前記ガイドRNAは、trans活性化crRNA(tracrRNA)部分に融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含むキメラガイドRNAである組成物。 クレーム10. 真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断を導入する方法であって、前記真核細胞中にII型クラスター化規則的間隔配置短鎖回文繰り返し(CRISPR)/Casシステムを導入することを含み、前記CRISPR/Casシステムは、 (a)核局在化シグナルを含むCas9ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、真核細胞中で発現するためにコドン最適化されている核酸と、 (b)前記標的核酸と交雑するガイドRNAをコードする核酸と、 を含み、前記ガイドRNAは、trans活性化crRNA(tracrRNA)部分と融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含むキメラガイドRNAであり、前記標的核酸配列は、前記crRNA部分に結合する第1の一本鎖と、トリヌクレオチドプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を有する第2の一本鎖とを含み、前記Cas9ポリペプチドと前記ガイドRNAとは、前記真核細胞中でCas9/RNA複合体を形成し、それによって標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断が導入される方法。 有効性の根拠のいくつかは、両独立クレーム中の用語「ガイドRNAをコードする核酸」の意味に依拠していました。ToolGenは、これらの用語の広義の解釈を求め、それが真核細胞中でRNAに転写されるDNAと真核細胞中に導入される前にインビトロで転写されるRNAとの両方を含むと主張しました。 ToolGenは、動詞「コードする」は、(DNAからRNAへの転写のプロセスによって)ガイドRNAを製造するための配列を提供すること、ならびにガイドRNAがその機能を発揮することを可能にする配列を提供することの両方を意味することができると主張しました。 ToolGenは、クレーム19に多く依存し、クレーム19は、クレーム10とともに読まれると、ガイドRNAをコードする核酸は、インビトロ転写されたRNAであることを必要としました。 クレーム19. 前記ガイドRNAをコードする核酸は、インビトロ転写されたRNAである、クレーム10~16の何れか一項に記載の方法。 ニコラス判事は、これらの主張を却下し、クレーム10は、全体としての明細書の文脈で読まれると、このクレームが、核酸は、ガイドRNAをコードする方法に限定されること、およびガイドRNAは、真核細胞中の核酸から転写されることを示していると判断しました。 同判事は、用語「コードする」は、当業者によって理解されるその通常の意味を与えられるべきであると判断しました。 「私の意見では、用語「コードする」は、クレーム10において、転写および翻訳によるCas9ポリペプチドの製造と、細胞中の転写によるガイドRNAの製造と、を指すその通常の意味(すなわち分子生物学者によって理解される)で用いられている。本クレームにおいて参照される核酸は、ガイドRNAを製造するために細胞中で用いられる情報を提供する。クレーム10は、既存のガイドRNAが細胞に導入されるシステムを包含しない。」 この解釈の結果、クレーム19は、妥当にクレーム10とともに読まれることはできず、明確性に欠けると判断されました。 優先権主張日 本上訴の審理は、これらのクレームにP1を基礎とする優先権の資格がなければ、P3の出願によって成立した2013年6月20日が適用されるという前提で行なわれました。P2は、単に制限断片長多形解析においてRNA誘導エンドヌクレアーゼを用いる方法に関係し、本特許出願中のクレームの何れかに記載の発明を開示しているとはみなされませんでした。 P1は、比較的短い文献であり、いかなるクレームも含まず、雑誌記事のようなものに「発明の概要」という追加の表題をもつ段落が加えられたものでした。P1に記載されたCRISPR/Cas9システムは、ストレプトコッカス・ピロジェネスから誘導され、インビトロ製造されたtracrRNAと融合したcrRNA部分を含む単一キメラガイドRNAを用いていました。P1は、ガイドRNAをインビトロ転写するために細胞中にDNA(またはウィルスRNA)が導入されるシステムを開示していませんでした。P1は、また、他のどの細菌種がII型CRISPR/CAsシステムを有するか、またはそのような種について内因性crRNAおよびtracrRNA配列をどのように決定するかも記載していませんでした。 そこで、問題は、P1の開示がToolGenの出願中のクレームの何れかについて優先権主張日を証明するために十分であるかどうかということでした。 オーストラリアにおける優先権主張日の検証は、開示の十分性についての検証と同じです。つまり、クレームされる発明を、当業者によってその発明が実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように、先願が開示しているという前提で、各クレームには先願からの優先権を主張する資格があります。 「ガイドRNAをコードする核酸」という文言に関して、判事は、優先権主張日に周知であった標準的な技法を用いてガイドRNAをインビトロで製造するためにガイドRNAをコードするプラスミドを用いることは、技術常識とともにP1中の情報を有す分子生物学者にとって難しい業務ではないことを認めました。判事は、また、当業者にとって、細胞中でガイドRNAを発生させる手段としてガイドRNAをコードするプラスミドDNAを用いることができることは、自明であることを認めました。 しかしながら、P1は、クレームにおいて定義されるガイドRNAをコードするDNA(またはウィルスRNA)の使用を開示せず、インビトロで製造され、次に細胞中に導入されるガイドRNAを開示しました。判事は、P1は、ToolGenの出願においてクレームされたものと同じ発明を開示せず、したがってクレームの何れにもP1からの優先権を主張する資格がないと判断しました。 「クレーム1および10(およびクレーム19を除く従属クレーム)は、クレームのガイドRNAが核酸(DNAまたはウィルスRNA)の形で細胞に導入され、次いで真核細胞中でガイドRNAをコードする発明を目的としている。P1は、明示的にも非明示的にも何れかのそのようなシステムを開示していない。したがってそれらのクレームに、P1を根拠とする優先権の資格がない。」 次の問題は、S.ピロジェネス以外の細菌種から誘導されるCas9ポリペプチドを用いてDNAを切断するためのシステムを、クレームされる発明が当業者によって実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように、P1が開示しているかどうかでした。P1がS.ピロジェネスから誘導されるCRISPR/Cas9システムを開示したというのが当事者間の共通認識でした。ニコラス判事は、P1が一般的な意味で他の細菌種から誘導されるCas9タンパク質の存在とそれらが真核細胞中のDNA切断を媒介するために用いられ得るという可能性とを開示していることを認めました。 しかし、他の細菌種から誘導されるCas9タンパク質を用いる可能性は、それ ― 単なる可能性 ― として記載されただけでした。P1は、この可能性についてのそれ以上のいかなる考察も含まず、他の細菌種から誘導されるすべてのまたはいくつかのII型Cas9タンパク質が真核細胞中のDNA切断を媒介するために特定のPAMとともに機能すると合理的に予測することができると推論され得るいかなる証拠も注釈も提示しませんでした。 さらに、S.ピロジェネスがII型CRISPR/Casシステムを有する他の細菌種の代表である可能性が高いこと、またはS.ピロジェネス由来成分を用いた実験の結果が他の細菌種から誘導されるCas9ポリペプチドも真核細胞中のDNAを切断することができると推測するための何れかの合理的な科学的根拠を提供すること、を示すものはP1において何も開示されませんでした。 その文脈において、証拠は、S.ピロジェネス以外の何れかの特定の細菌種から誘導されるCRISPR/Cas9システムが真核細胞中で機能するか否かについて相当な不確かさがあること、および真核細胞中のこのシステムの使用を検証するためにかなりの実験研究が行われる必要があることを示しました。 判事は、優先権主張日において、当業者(またはチーム)がS.ピロジェネス以外の細菌種を用いてクレーム1および10の発明を実施するために行う必要がある研究は、かなりの研究プロジェクトを含むと判断しました。 「私の意見では、当業者のチームは、長期の研究および実験を行う必要があり、途上においてかなりの困難に逢う可能性が非常に高い。この研究の多くは非日常業務的であり、その実行状況においてP1は意味のある指針または方向および成功の保証は提供しなかった。」 「優先権主張日現在、真核細胞中のゲノム編集を専門とする分子生物学者と原核生物中のCRISPR/Casシステムにおける専門知識を有する微生物学者とを含む当業者チームが、過度の負担なしでS.ピロジェネス以外の細菌種を用いてクレーム1の組成物を作ることまたはクレーム10の方法を実施することをP1は可能にしていなかったと確信する。」 ガイドRNA自体に関して、P1は、tracrRNA部分に融合したcrRNA部分を含む単一キメラガイドRNAを、それがどのようにして設計されたかまたはその長さがどのように変えられる可能性があるかについていかなる情報も提供せずに開示しました。 ニコラス判事は、P1に開示されている単一ガイドRNAを再設計することまたはS.ピロジェネス以外の細菌種を用いて単一ガイドRNAを設計および構築することは、当業者にとって過度の負担であるとみなしました。 判事は、P1は、クレームされた発明を、発明が当業者によって実施されるために十分に明確かつ十分に完全であるように開示することができていないと判断しました。クレームのどれにもP1からの優先権を主張する資格がありませんでした。 実施可能性 1990年特許法(Cth)の第40条(2)(a)は、完全な明細書は、発明が当業者によって実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように発明を開示しなければならないとしています。実施可能性のための要件は、他の裁判所管轄区域、特にヨーロッパおよび英国において適用可能なものに似ています。 被告は、本特許出願が、P1とは異なり、「ガイドRNAをコードする核酸」を含む発明を開示していることを認め、クレームの発明が、この特定の点において、十分に実施可能でないと主張しませんでした。 しかしながら、本特許出願中に開示されている実施例のどれも、S.ピロジェネス以外のいかなる種からのCRISPR/Cas9成分も使用しませんでした。被告は、本特許出願は、S.ピロジェネス以外の細菌種から誘導されるシステムを含む発明を過度の負担なしでは実施可能にしないと申し立てました。判事は、P1に関して示された理由によりその申し立てを基本的に認めました。 同様に、ガイドRNAに関し、そのtracrRNA成分を含むsgRNAの設計に関してP1の開示と本特許出願との間に実質的な差はないとみなされました。よって、判事は、本特許出願には、本特許出願中に開示されているものと異なる長さを有するsgRNAの実施可能な開示はないと判断しました。 裏付け(サポート) 1990年特許法(Cth)の第40条(3)は、クレームは、明細書において開示される材料によって裏付けられなければならないとしています。この規定は、明細書によって開示される分野への技術的な貢献がクレームの広さを正当化することを求めています。 実施可能性と裏付けとの重複する要件を考慮して、判事は、クレームが実施を可能にする開示を提供することによって、第40条(2)(a)の要件を満たすかもしれないが第40条(3)の条件は満たさない事例があるかもしれないと注記しました。しかし、判事は、実施を可能にする開示がない発明へのクレームが、どのように裏付け要件を満たすことができるのか探るのは難しいと判断しました。そのような状況においてクレームによって定義される独占の範囲が当分野への技術的な貢献によって正当化され得ないためです。 本発明は、第40条(2)(a)の下で十分に実施可能ではないと判断して、判事は、クレームのすべてが第40条(3)の下で裏付けに欠けると判断しました。 新規性および進歩性 P1の出願日後ではあるがP3の出願日前に公開された3つの雑誌論文が新規性および進歩性の問題に関連していました。 Congら、「CRISPR/Casシステムを用いるマルチプレックスゲノム工学」(2013年)サイエンス339巻、819~823頁および補足資料; Maliら、「Cas9によるRNA-誘導ヒトゲノム工学」(2013年)サイエンス339巻、823~826頁および補足資料;および Wangら、「CRISPR/Cas-媒介ゲノム工学による複数遺伝子中の変異を有するマウスの一ステップ発生」(2013年)セル、153巻、910~918頁および補足情報。 ToolGenの出願にはP1によって確立された優先権主張日の資格がないと判断し、判事は、先行技術を考慮して、クレーム1~20は、新規性および進歩性に欠け、クレーム21は、進歩性に欠けると判断しました。 ToolGenには、クレームを補正する選択肢があります。しかし、被告は既にToolGenによって行われ得るいかなるそのような申請にも異議を申し立てると前もって示唆しています。 ToolGen Incorporated v Fisher (No 2)  FCA 794 (ToolGen FCA)の. ToolGen FCAの. ToolGen FCAの. ToolGen FCAの. ToolGen FCAの. 1990年特許法 (Cth) 第43条(2)および(2A); 1991年特許規則 (Cth) 規則2.12(4)および3.13A. ToolGen FCAの. ...
オーストラリア連邦裁判所は、オーストラリアの重要なCRISPR特許紛争において判決を下し、ToolGen社の特許出願において土台となるCRISPR技術についてのクレームは何れも有効でないと判断しました。この訴訟は、第1の被告-グラント・フィッシャーという名の名目上の関係者-がToolGenの出願への特許権付与に対する異議申立に成功したとする特許庁長官の決定に端を発する上訴です。 特許出願 本件は、CRISPR/Casシステムおよび真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的二本鎖切断を導入するそれらのシステムの使用に関するToolGenの出願に関するものでした。 この出願は、2013年10月23日に出願され、3件の仮出願からの優先権を主張しています。 2012年10月23日出願の米国特許仮出願第61/717,324号(「P1」); 2013年3月20日出願の米国特許仮出願第61/803,599号(「P2」);および 2013年6月20日出願の米国特許仮出願第61/837,481号(「P3」)。 この出願は、2つの独立クレームを含みます。 クレーム1. 真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断を導入する際に使用されるII型クラスター化規則的間隔配置短鎖回文繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)/Casシステムを含み、前記CRISPR/Casシステムは、(i)核局在化配列を含むCas9ポリペプチドをコードする核酸と、(ii)標的核酸に交雑するガイドRNAをコードする核酸と、を含む組成物であって、前記ガイドRNAは、trans活性化crRNA(tracrRNA)部分に融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含むキメラガイドRNAである組成物。 クレーム10. 真核細胞中の標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断を導入する方法であって、前記真核細胞中にII型クラスター化規則的間隔配置短鎖回文繰り返し(CRISPR)/Casシステムを導入することを含み、前記CRISPR/Casシステムは、 (a)核局在化シグナルを含むCas9ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、真核細胞中で発現するためにコドン最適化されている核酸と、 (b)前記標的核酸と交雑するガイドRNAをコードする核酸と、 を含み、前記ガイドRNAは、trans活性化crRNA(tracrRNA)部分と融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含むキメラガイドRNAであり、前記標的核酸配列は、前記crRNA部分に結合する第1の一本鎖と、トリヌクレオチドプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を有する第2の一本鎖とを含み、前記Cas9ポリペプチドと前記ガイドRNAとは、前記真核細胞中でCas9/RNA複合体を形成し、それによって標的核酸配列において部位特異的な二本鎖切断が導入される方法。 有効性の根拠のいくつかは、両独立クレーム中の用語「ガイドRNAをコードする核酸」の意味に依拠していました。ToolGenは、これらの用語の広義の解釈を求め、それが真核細胞中でRNAに転写されるDNAと真核細胞中に導入される前にインビトロで転写されるRNAとの両方を含むと主張しました。 ToolGenは、動詞「コードする」は、(DNAからRNAへの転写のプロセスによって)ガイドRNAを製造するための配列を提供すること、ならびにガイドRNAがその機能を発揮することを可能にする配列を提供することの両方を意味することができると主張しました。 ToolGenは、クレーム19に多く依存し、クレーム19は、クレーム10とともに読まれると、ガイドRNAをコードする核酸は、インビトロ転写されたRNAであることを必要としました。 クレーム19. 前記ガイドRNAをコードする核酸は、インビトロ転写されたRNAである、クレーム10~16の何れか一項に記載の方法。 ニコラス判事は、これらの主張を却下し、クレーム10は、全体としての明細書の文脈で読まれると、このクレームが、核酸は、ガイドRNAをコードする方法に限定されること、およびガイドRNAは、真核細胞中の核酸から転写されることを示していると判断しました。 同判事は、用語「コードする」は、当業者によって理解されるその通常の意味を与えられるべきであると判断しました。 「私の意見では、用語「コードする」は、クレーム10において、転写および翻訳によるCas9ポリペプチドの製造と、細胞中の転写によるガイドRNAの製造と、を指すその通常の意味(すなわち分子生物学者によって理解される)で用いられている。本クレームにおいて参照される核酸は、ガイドRNAを製造するために細胞中で用いられる情報を提供する。クレーム10は、既存のガイドRNAが細胞に導入されるシステムを包含しない。」 この解釈の結果、クレーム19は、妥当にクレーム10とともに読まれることはできず、明確性に欠けると判断されました。 優先権主張日 本上訴の審理は、これらのクレームにP1を基礎とする優先権の資格がなければ、P3の出願によって成立した2013年6月20日が適用されるという前提で行なわれました。P2は、単に制限断片長多形解析においてRNA誘導エンドヌクレアーゼを用いる方法に関係し、本特許出願中のクレームの何れかに記載の発明を開示しているとはみなされませんでした。 P1は、比較的短い文献であり、いかなるクレームも含まず、雑誌記事のようなものに「発明の概要」という追加の表題をもつ段落が加えられたものでした。P1に記載されたCRISPR/Cas9システムは、ストレプトコッカス・ピロジェネスから誘導され、インビトロ製造されたtracrRNAと融合したcrRNA部分を含む単一キメラガイドRNAを用いていました。P1は、ガイドRNAをインビトロ転写するために細胞中にDNA(またはウィルスRNA)が導入されるシステムを開示していませんでした。P1は、また、他のどの細菌種がII型CRISPR/CAsシステムを有するか、またはそのような種について内因性crRNAおよびtracrRNA配列をどのように決定するかも記載していませんでした。 そこで、問題は、P1の開示がToolGenの出願中のクレームの何れかについて優先権主張日を証明するために十分であるかどうかということでした。 オーストラリアにおける優先権主張日の検証は、開示の十分性についての検証と同じです。つまり、クレームされる発明を、当業者によってその発明が実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように、先願が開示しているという前提で、各クレームには先願からの優先権を主張する資格があります。 「ガイドRNAをコードする核酸」という文言に関して、判事は、優先権主張日に周知であった標準的な技法を用いてガイドRNAをインビトロで製造するためにガイドRNAをコードするプラスミドを用いることは、技術常識とともにP1中の情報を有す分子生物学者にとって難しい業務ではないことを認めました。判事は、また、当業者にとって、細胞中でガイドRNAを発生させる手段としてガイドRNAをコードするプラスミドDNAを用いることができることは、自明であることを認めました。 しかしながら、P1は、クレームにおいて定義されるガイドRNAをコードするDNA(またはウィルスRNA)の使用を開示せず、インビトロで製造され、次に細胞中に導入されるガイドRNAを開示しました。判事は、P1は、ToolGenの出願においてクレームされたものと同じ発明を開示せず、したがってクレームの何れにもP1からの優先権を主張する資格がないと判断しました。 「クレーム1および10(およびクレーム19を除く従属クレーム)は、クレームのガイドRNAが核酸(DNAまたはウィルスRNA)の形で細胞に導入され、次いで真核細胞中でガイドRNAをコードする発明を目的としている。P1は、明示的にも非明示的にも何れかのそのようなシステムを開示していない。したがってそれらのクレームに、P1を根拠とする優先権の資格がない。」 次の問題は、S.ピロジェネス以外の細菌種から誘導されるCas9ポリペプチドを用いてDNAを切断するためのシステムを、クレームされる発明が当業者によって実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように、P1が開示しているかどうかでした。P1がS.ピロジェネスから誘導されるCRISPR/Cas9システムを開示したというのが当事者間の共通認識でした。ニコラス判事は、P1が一般的な意味で他の細菌種から誘導されるCas9タンパク質の存在とそれらが真核細胞中のDNA切断を媒介するために用いられ得るという可能性とを開示していることを認めました。 しかし、他の細菌種から誘導されるCas9タンパク質を用いる可能性は、それ ― 単なる可能性 ― として記載されただけでした。P1は、この可能性についてのそれ以上のいかなる考察も含まず、他の細菌種から誘導されるすべてのまたはいくつかのII型Cas9タンパク質が真核細胞中のDNA切断を媒介するために特定のPAMとともに機能すると合理的に予測することができると推論され得るいかなる証拠も注釈も提示しませんでした。 さらに、S.ピロジェネスがII型CRISPR/Casシステムを有する他の細菌種の代表である可能性が高いこと、またはS.ピロジェネス由来成分を用いた実験の結果が他の細菌種から誘導されるCas9ポリペプチドも真核細胞中のDNAを切断することができると推測するための何れかの合理的な科学的根拠を提供すること、を示すものはP1において何も開示されませんでした。 その文脈において、証拠は、S.ピロジェネス以外の何れかの特定の細菌種から誘導されるCRISPR/Cas9システムが真核細胞中で機能するか否かについて相当な不確かさがあること、および真核細胞中のこのシステムの使用を検証するためにかなりの実験研究が行われる必要があることを示しました。 判事は、優先権主張日において、当業者(またはチーム)がS.ピロジェネス以外の細菌種を用いてクレーム1および10の発明を実施するために行う必要がある研究は、かなりの研究プロジェクトを含むと判断しました。 「私の意見では、当業者のチームは、長期の研究および実験を行う必要があり、途上においてかなりの困難に逢う可能性が非常に高い。この研究の多くは非日常業務的であり、その実行状況においてP1は意味のある指針または方向および成功の保証は提供しなかった。」 「優先権主張日現在、真核細胞中のゲノム編集を専門とする分子生物学者と原核生物中のCRISPR/Casシステムにおける専門知識を有する微生物学者とを含む当業者チームが、過度の負担なしでS.ピロジェネス以外の細菌種を用いてクレーム1の組成物を作ることまたはクレーム10の方法を実施することをP1は可能にしていなかったと確信する。」 ガイドRNA自体に関して、P1は、tracrRNA部分に融合したcrRNA部分を含む単一キメラガイドRNAを、それがどのようにして設計されたかまたはその長さがどのように変えられる可能性があるかについていかなる情報も提供せずに開示しました。 ニコラス判事は、P1に開示されている単一ガイドRNAを再設計することまたはS.ピロジェネス以外の細菌種を用いて単一ガイドRNAを設計および構築することは、当業者にとって過度の負担であるとみなしました。 判事は、P1は、クレームされた発明を、発明が当業者によって実施されるために十分に明確かつ十分に完全であるように開示することができていないと判断しました。クレームのどれにもP1からの優先権を主張する資格がありませんでした。 実施可能性 1990年特許法(Cth)の第40条(2)(a)は、完全な明細書は、発明が当業者によって実施されるために十分に明確であり、かつ十分に完全であるように発明を開示しなければならないとしています。実施可能性のための要件は、他の裁判所管轄区域、特にヨーロッパおよび英国において適用可能なものに似ています。 被告は、本特許出願が、P1とは異なり、「ガイドRNAをコードする核酸」を含む発明を開示していることを認め、クレームの発明が、この特定の点において、十分に実施可能でないと主張しませんでした。 しかしながら、本特許出願中に開示されている実施例のどれも、S.ピロジェネス以外のいかなる種からのCRISPR/Cas9成分も使用しませんでした。被告は、本特許出願は、S.ピロジェネス以外の細菌種から誘導されるシステムを含む発明を過度の負担なしでは実施可能にしないと申し立てました。判事は、P1に関して示された理由によりその申し立てを基本的に認めました。 同様に、ガイドRNAに関し、そのtracrRNA成分を含むsgRNAの設計に関してP1の開示と本特許出願との間に実質的な差はないとみなされました。よって、判事は、本特許出願には、本特許出願中に開示されているものと異なる長さを有するsgRNAの実施可能な開示はないと判断しました。 裏付け(サポート) 1990年特許法(Cth)の第40条(3)は、クレームは、明細書において開示される材料によって裏付けられなければならないとしています。この規定は、明細書によって開示される分野への技術的な貢献がクレームの広さを正当化することを求めています。 実施可能性と裏付けとの重複する要件を考慮して、判事は、クレームが実施を可能にする開示を提供することによって、第40条(2)(a)の要件を満たすかもしれないが第40条(3)の条件は満たさない事例があるかもしれないと注記しました。しかし、判事は、実施を可能にする開示がない発明へのクレームが、どのように裏付け要件を満たすことができるのか探るのは難しいと判断しました。そのような状況においてクレームによって定義される独占の範囲が当分野への技術的な貢献によって正当化され得ないためです。 本発明は、第40条(2)(a)の下で十分に実施可能ではないと判断して、判事は、クレームのすべてが第40条(3)の下で裏付けに欠けると判断しました。 新規性および進歩性 P1の出願日後ではあるがP3の出願日前に公開された3つの雑誌論文が新規性および進歩性の問題に関連していました。 Congら、「CRISPR/Casシステムを用いるマルチプレックスゲノム工学」(2013年)サイエンス339巻、819~823頁および補足資料; Maliら、「Cas9によるRNA-誘導ヒトゲノム工学」(2013年)サイエンス339巻、823~826頁および補足資料;および Wangら、「CRISPR/Cas-媒介ゲノム工学による複数遺伝子中の変異を有するマウスの一ステップ発生」(2013年)セル、153巻、910~918頁および補足情報。 ToolGenの出願にはP1によって確立された優先権主張日の資格がないと判断し、判事は、先行技術を考慮して、クレーム1~20は、新規性および進歩性に欠け、クレーム21は、進歩性に欠けると判断しました。 ToolGenには、クレームを補正する選択肢があります。しかし、被告は既にToolGenによって行われ得るいかなるそのような申請にも異議を申し立てると前もって示唆しています。 ToolGen Incorporated v Fisher (No 2)  FCA 794 (ToolGen FCA)の. ToolGen FCAの. ToolGen...
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ケーススタディ:中国特許実務における裏付け問題に対処した、後出しデータの成功例
中国は以前、特許出願の審査時に補足データを後出し提出することについて、他の主要特許システムと比較してもより厳しい基準を適用していました。しかし、米国政府と中華人民共和国との最近の経済および貿易協定の調印により、中国国立知的財産管理局(CNIPA)は、特許審査のガイドラインに数回の改訂を行いました。その結果、現行の後出しデータ審査基準は、今は米国特許商標庁(USPTO)および欧州特許庁(EPO)との一貫性が高まり、グローバルな特許実務の調和において顕著に前進しました。 しかし、この前進は、進歩性および十分な開示(実施可能性など)に対処することを目的とする後出しデータに結び付けられています。中国国内実務において、裏付けに関する問題を扱う特定の規定はありません。後出しデータを用いて裏付けの問題に対処するのは困難であるというのが広く受け入れられている見方です。しかし、これにかかわらず、困難であっても必要ならば試してみることをお勧めします。ここで最近の成功例の概略をまとめます。 出願例は、PCT出願の中国国内移行出願であり、そこでは図面に示されていた化学構造に基づいて一般化された一般式を有する化合物の保護が求められていました。中国の審査官は、これらの化合物が実施例において略語で特定されているだけであり、それらの化学的同一性または化学構造を特定していないことを理由として裏付けに関する拒絶理由(すなわち、明細書によって裏付けられていない)を取り上げました。 この問題に対処するために、出願人は、図面に示されていた特定の化合物と実施例中で用いた略語との間の対応関係を明確にすることを目的として、出願例の優先権主張日後に発明者によって公開された論文を提出しました。しかし、この論文は、優先権主張日後に公開され、直接的な対応情報が記録として含まれていなかったため、審査官には受け入れられませんでした。 ここでこの出願例は行き詰まったように見えますが、実施例において略語が用いられたという理由だけで許可されないのは出願人に対して不当であると弊所では考えました。 よって、弊所は、さらに行動を起こしました。提出された論文が本出願と同じ主題を考察し同じ結果を得たこと、そして実施例中で用いた略語が図面に示したそれらの特定の化合物に実際に対応すること、を確証するための宣言書を提供するように出願人に要請しました。同時に、弊所は本出願によってなされる技術的貢献について審査官と議論しました。本出願において行なわれ、以前に提出された論文にも記録された広範な実験研究によって出願人が先行技術に多大な技術的貢献をしている、すなわち、癌治療に有効である有効化合物を提供していることを否定することはできません。特に中国特許法の第1条によって定められる「発明-創造を奨励する」精神を考慮すれば、そのような技術的貢献は、無視・無報酬であってはなりません。その後の考慮および審査官のチーム内の考察の末、審査官はこの出願例に特許を付与しました。 上記の例の中間手続から、後出しデータは特定の状況において、中国国内実務においても、しっかりした追加の裏付け分析と共に利用されれば裏付けの拒絶に対処するために役立つことが分ります。突き詰めていくと、特許システムの本質は、特許権を求める技術解決策開示と、出願人による技術的貢献と見合った特許権保護範囲との交換を含み、これは常に考慮されるべきです。 同じような問題に直面されている場合、弊所の専門家チームにご連絡いただければどのようにお手伝いできるかを提案させていただきます。 この記事は最初に2023年7月13日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
中国は以前、特許出願の審査時に補足データを後出し提出することについて、他の主要特許システムと比較してもより厳しい基準を適用していました。しかし、米国政府と中華人民共和国との最近の経済および貿易協定の調印により、中国国立知的財産管理局(CNIPA)は、特許審査のガイドラインに数回の改訂を行いました。その結果、現行の後出しデータ審査基準は、今は米国特許商標庁(USPTO)および欧州特許庁(EPO)との一貫性が高まり、グローバルな特許実務の調和において顕著に前進しました。 しかし、この前進は、進歩性および十分な開示(実施可能性など)に対処することを目的とする後出しデータに結び付けられています。中国国内実務において、裏付けに関する問題を扱う特定の規定はありません。後出しデータを用いて裏付けの問題に対処するのは困難であるというのが広く受け入れられている見方です。しかし、これにかかわらず、困難であっても必要ならば試してみることをお勧めします。ここで最近の成功例の概略をまとめます。 出願例は、PCT出願の中国国内移行出願であり、そこでは図面に示されていた化学構造に基づいて一般化された一般式を有する化合物の保護が求められていました。中国の審査官は、これらの化合物が実施例において略語で特定されているだけであり、それらの化学的同一性または化学構造を特定していないことを理由として裏付けに関する拒絶理由(すなわち、明細書によって裏付けられていない)を取り上げました。 この問題に対処するために、出願人は、図面に示されていた特定の化合物と実施例中で用いた略語との間の対応関係を明確にすることを目的として、出願例の優先権主張日後に発明者によって公開された論文を提出しました。しかし、この論文は、優先権主張日後に公開され、直接的な対応情報が記録として含まれていなかったため、審査官には受け入れられませんでした。 ここでこの出願例は行き詰まったように見えますが、実施例において略語が用いられたという理由だけで許可されないのは出願人に対して不当であると弊所では考えました。 よって、弊所は、さらに行動を起こしました。提出された論文が本出願と同じ主題を考察し同じ結果を得たこと、そして実施例中で用いた略語が図面に示したそれらの特定の化合物に実際に対応すること、を確証するための宣言書を提供するように出願人に要請しました。同時に、弊所は本出願によってなされる技術的貢献について審査官と議論しました。本出願において行なわれ、以前に提出された論文にも記録された広範な実験研究によって出願人が先行技術に多大な技術的貢献をしている、すなわち、癌治療に有効である有効化合物を提供していることを否定することはできません。特に中国特許法の第1条によって定められる「発明-創造を奨励する」精神を考慮すれば、そのような技術的貢献は、無視・無報酬であってはなりません。その後の考慮および審査官のチーム内の考察の末、審査官はこの出願例に特許を付与しました。 上記の例の中間手続から、後出しデータは特定の状況において、中国国内実務においても、しっかりした追加の裏付け分析と共に利用されれば裏付けの拒絶に対処するために役立つことが分ります。突き詰めていくと、特許システムの本質は、特許権を求める技術解決策開示と、出願人による技術的貢献と見合った特許権保護範囲との交換を含み、これは常に考慮されるべきです。 同じような問題に直面されている場合、弊所の専門家チームにご連絡いただければどのようにお手伝いできるかを提案させていただきます。 この記事は最初に2023年7月13日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
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フィリピンの改訂特許実施規則および規制2022
フィリピンの知的財産庁(IPOPHL)は、2022年9月20日に発効した特許、実用新案および工業意匠のための改訂実施規則および規則(IRR)を発表しました。 注目されるいくつかのIRRへの変更は、以下の通りです。 今後、出願提出の時点で包括または特定委任状が必要です。出願提出の時点で委任状を提出することができないと、出願が不完全とされる可能性があります。 包括委任状の認証はもはや必要なく、今後は電子署名が許容されます。 今後は明細書において発明の概要(Summary of invention)が必要となり、発明の概要が欠如している場合、出願が不完全とみなされる可能性があります。 不完全とみなされた出願には出願日が与えられません。出願日は完全な出願のためのすべての要件が満たされた日付として与えられます。 超過クレーム料は、出願提出の時点で全額支払われなければならず、複数従属クレームならびに属クレーム、種クレームおよびマーカッシュ形式クレームは、クレーム料の対象となります。 何れかの不足クレーム料を支払うために、支払いにおける不足額に関する通知が発行されてから1ヶ月のグレースピリオドが利用可能であり、グレースピリオド内に不足クレーム料を全額支払うことができないと、支払いが行われていないクレームが削除されます。 今後、親出願または先の分割出願の特許付与日あるいは取下げ日から4ヶ月以内に自発的な分割出願を提出することができます。 今後、単一性の欠如による拒絶に起因して分割要求が最終決定とされた場合、分割要求に対し抗議しすることが可能です。これにより、必須の分割出願を提出する4ヶ月期間が抗議が解決された後にのみ始まるよう請求することが可能です。 最初の親特許出願から必須の分割出願を提出する最終期限は、分割要求が最終決定とされた日付から4ヶ月、または抗議の結果通知の日付から4ヶ月です。 先の分割出願に基づく必須の分割出願の場合、提出する最終期限は分割要求が最終決定とされた日付から4ヶ月、または(選択要求に応答する形での)選択の日付から4ヶ月です。 必須の分割出願を行うために2ヶ月の期限延長が利用可能です。 オフィスアクションに応答するために、以前は2度利用可能だった期限延長が今後は2ヶ月の期限延長が1度だけ利用可能です。 今後、出願が公開され、審査請求行われた後に、早期審査を請求することが可能です。 出願の拒絶に対して異議申立てを行うための期間は、以前は最終拒絶通知の発送日から4ヶ月だったのが、2ヶ月に短縮されました。 取り下げられた出願を復活させる請願を提出するための期間は、以前は通知の発送日から4ヶ月だったのが、3ヶ月に短縮されました。 上記に関してIPOPHLからさらに明確性、およびその他情報を入手できましたら上記規定について最新情報をお知らせします。 この記事は最初に2022年9月23日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
フィリピンの知的財産庁(IPOPHL)は、2022年9月20日に発効した特許、実用新案および工業意匠のための改訂実施規則および規則(IRR)を発表しました。 注目されるいくつかのIRRへの変更は、以下の通りです。 今後、出願提出の時点で包括または特定委任状が必要です。出願提出の時点で委任状を提出することができないと、出願が不完全とされる可能性があります。 包括委任状の認証はもはや必要なく、今後は電子署名が許容されます。 今後は明細書において発明の概要(Summary of invention)が必要となり、発明の概要が欠如している場合、出願が不完全とみなされる可能性があります。 不完全とみなされた出願には出願日が与えられません。出願日は完全な出願のためのすべての要件が満たされた日付として与えられます。 超過クレーム料は、出願提出の時点で全額支払われなければならず、複数従属クレームならびに属クレーム、種クレームおよびマーカッシュ形式クレームは、クレーム料の対象となります。 何れかの不足クレーム料を支払うために、支払いにおける不足額に関する通知が発行されてから1ヶ月のグレースピリオドが利用可能であり、グレースピリオド内に不足クレーム料を全額支払うことができないと、支払いが行われていないクレームが削除されます。 今後、親出願または先の分割出願の特許付与日あるいは取下げ日から4ヶ月以内に自発的な分割出願を提出することができます。 今後、単一性の欠如による拒絶に起因して分割要求が最終決定とされた場合、分割要求に対し抗議しすることが可能です。これにより、必須の分割出願を提出する4ヶ月期間が抗議が解決された後にのみ始まるよう請求することが可能です。 最初の親特許出願から必須の分割出願を提出する最終期限は、分割要求が最終決定とされた日付から4ヶ月、または抗議の結果通知の日付から4ヶ月です。 先の分割出願に基づく必須の分割出願の場合、提出する最終期限は分割要求が最終決定とされた日付から4ヶ月、または(選択要求に応答する形での)選択の日付から4ヶ月です。 必須の分割出願を行うために2ヶ月の期限延長が利用可能です。 オフィスアクションに応答するために、以前は2度利用可能だった期限延長が今後は2ヶ月の期限延長が1度だけ利用可能です。 今後、出願が公開され、審査請求行われた後に、早期審査を請求することが可能です。 出願の拒絶に対して異議申立てを行うための期間は、以前は最終拒絶通知の発送日から4ヶ月だったのが、2ヶ月に短縮されました。 取り下げられた出願を復活させる請願を提出するための期間は、以前は通知の発送日から4ヶ月だったのが、3ヶ月に短縮されました。 上記に関してIPOPHLからさらに明確性、およびその他情報を入手できましたら上記規定について最新情報をお知らせします。 この記事は最初に2022年9月23日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
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タイ-商標審査ガイドラインの更新
2022年1月17日現在、商標審査がグローバルな商標庁基準と確実に足並みを揃えることを目標にする新しい登録官の審査マニュアル(「審査マニュアル」)が既存の指針を置き換えました。 変更されたもののいくつかは以下のように要約されます。 形式要件 認証された委任状(「POA」)を求める従来の要件に基づけば、使用される書式または文言に関して登録官が裁量を有します。今回、新しい審査マニュアルによると書式または文言が標準化され、出願人の管轄区域(または登記地)を含まなければなりません。例えばオーストラリアの法律に基づいて正式に設立され現存する法人、スプルーソン・アンド・ファーガソン(SPRUSON & FERGUSON)非公開株式有限責任会社。 POAを認証する公証人は、出願人と同じ国籍である必要はありませんが、認証の時点で同じ国に居なければなりません。 識別性に関する明確さ 審査マニュアルの今回の改訂の前に、商標が識別可能であるかどうかについて決定することは、審査する登録官のおおまかな個人裁量に強く依存し、そのことが一貫性を欠く決定を生む結果となっていました。従来の審査実務によると、ほとんどの管轄区域において識別可能だった標章がタイでは識別性テストに合格せず、登録可能ではありませんでした。新しい審査マニュアルによると、識別性に関するテストを明確にするために最高裁判所の判決が採用されました。 A.文字商標 一般的でなく、叙述でなく、標準的な順序(すなわちABC、123)でもなく、4つ以上の標準文字を含む文字商標は識別可能であり登録可能であるとみなされます。例えば、以下のものです。 従来であれば、そのような性質の標章は、特定の方法で出願されるかまたは使用を通じて識別性を獲得したことを示さなければなりませんでした。 B.一般的な標章 今回の審査マニュアルは、識別可能でなく登録することができない一般的な標章の例を規定しています。 一般的な語/用語:International、Global、Warranty、First、Second、ABC、123、3D、4D 国/民族に関する一般的な語/用語:Silkroad(周知のアラブ通商路を指す)、Land of Rising Sun(日本を指します) 色の名:Green、Red、Blue、Gold フレーズ:Technology for life、Make it better 一般的な記号: £, $, Σ, ♀, ♂, ▶, ⏯ 考案物 標準的な形状、ラベル、または識別可能な他の構成要素のない繰り返しパターン、たとえば  , , , 商品/サービスの明細書 タイは、ニース分類を採用していますが、明細書は、明確かつ特定的でなければならず、広義の用語は許可されません。新しい審査マニュアルに基づけば、あらゆる項目は明確に特定され、項目化されなければならず、第5類の栄養補助食品や第33類のアルコール飲料(ビールを除く)などの広義の用語は許容されないことも明確にされました。許容される文言は、ミネラルで作られた栄養補助食品のように主成分を特定するか、またはワイン;ジン;ウィスキーのように各項目を明確に特定しなければなりません。参考までに、https://tmsearch.ipthailand.go.th/ において承認される商品/サービスの一覧にアクセスすることができます。 さらに、明細書拒絶に対して3回の応答機会しかなく、2回目の応答の後に、3回目の拒絶に対しては、出願人が登録官の提案の全面的な許容、あるいは拒絶に対する全面的な異議申立て(補正は許されない)のいずれかを提出する必要があります。 結論 全体として、新しい審査マニュアルと国際的な実務との一致は、タイにおける保護を求めるブランドオーナーにとって有望な展開です。タイにおいて以前に識別可能な標章が拒絶されたことがある場合、新しいガイドラインに基づいてそれらの標章が識別性基準を満たすなら、それらの標章を再出願する機会があり得ます。また、今後タイの審査官が出願を審査する際には新しい審査マニュアルを採用しますので、示される拒絶の数も減少すると予測されます。タイにおける審査マニュアルおよび知財全般についてさらに情報をお求めの場合、弊所の商標チームにご連絡ください。 この記事は最初に2022年5月26日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
2022年1月17日現在、商標審査がグローバルな商標庁基準と確実に足並みを揃えることを目標にする新しい登録官の審査マニュアル(「審査マニュアル」)が既存の指針を置き換えました。 変更されたもののいくつかは以下のように要約されます。 形式要件 認証された委任状(「POA」)を求める従来の要件に基づけば、使用される書式または文言に関して登録官が裁量を有します。今回、新しい審査マニュアルによると書式または文言が標準化され、出願人の管轄区域(または登記地)を含まなければなりません。例えばオーストラリアの法律に基づいて正式に設立され現存する法人、スプルーソン・アンド・ファーガソン(SPRUSON & FERGUSON)非公開株式有限責任会社。 POAを認証する公証人は、出願人と同じ国籍である必要はありませんが、認証の時点で同じ国に居なければなりません。 識別性に関する明確さ 審査マニュアルの今回の改訂の前に、商標が識別可能であるかどうかについて決定することは、審査する登録官のおおまかな個人裁量に強く依存し、そのことが一貫性を欠く決定を生む結果となっていました。従来の審査実務によると、ほとんどの管轄区域において識別可能だった標章がタイでは識別性テストに合格せず、登録可能ではありませんでした。新しい審査マニュアルによると、識別性に関するテストを明確にするために最高裁判所の判決が採用されました。 A.文字商標 一般的でなく、叙述でなく、標準的な順序(すなわちABC、123)でもなく、4つ以上の標準文字を含む文字商標は識別可能であり登録可能であるとみなされます。例えば、以下のものです。 従来であれば、そのような性質の標章は、特定の方法で出願されるかまたは使用を通じて識別性を獲得したことを示さなければなりませんでした。 B.一般的な標章 今回の審査マニュアルは、識別可能でなく登録することができない一般的な標章の例を規定しています。 一般的な語/用語:International、Global、Warranty、First、Second、ABC、123、3D、4D 国/民族に関する一般的な語/用語:Silkroad(周知のアラブ通商路を指す)、Land of Rising Sun(日本を指します) 色の名:Green、Red、Blue、Gold フレーズ:Technology for life、Make it better 一般的な記号: £, $, Σ, ♀, ♂, ▶, ⏯ 考案物 標準的な形状、ラベル、または識別可能な他の構成要素のない繰り返しパターン、たとえば  , , , 商品/サービスの明細書 タイは、ニース分類を採用していますが、明細書は、明確かつ特定的でなければならず、広義の用語は許可されません。新しい審査マニュアルに基づけば、あらゆる項目は明確に特定され、項目化されなければならず、第5類の栄養補助食品や第33類のアルコール飲料(ビールを除く)などの広義の用語は許容されないことも明確にされました。許容される文言は、ミネラルで作られた栄養補助食品のように主成分を特定するか、またはワイン;ジン;ウィスキーのように各項目を明確に特定しなければなりません。参考までに、https://tmsearch.ipthailand.go.th/ において承認される商品/サービスの一覧にアクセスすることができます。 さらに、明細書拒絶に対して3回の応答機会しかなく、2回目の応答の後に、3回目の拒絶に対しては、出願人が登録官の提案の全面的な許容、あるいは拒絶に対する全面的な異議申立て(補正は許されない)のいずれかを提出する必要があります。 結論 全体として、新しい審査マニュアルと国際的な実務との一致は、タイにおける保護を求めるブランドオーナーにとって有望な展開です。タイにおいて以前に識別可能な標章が拒絶されたことがある場合、新しいガイドラインに基づいてそれらの標章が識別性基準を満たすなら、それらの標章を再出願する機会があり得ます。また、今後タイの審査官が出願を審査する際には新しい審査マニュアルを採用しますので、示される拒絶の数も減少すると予測されます。タイにおける審査マニュアルおよび知財全般についてさらに情報をお求めの場合、弊所の商標チームにご連絡ください。 この記事は最初に2022年5月26日に英語で公開されました 弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。 日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。 出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。
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シンガポール特許:2022年知的財産(改正)法における手続き変更点及び庁費用更新の最新情報
シンガポール知的財産局(「IPOS」)が2021年知的財産(「IP」)(改正)法案(「法案」)を提案したことを以前ご報告しましたが、この法案が2022年1月12日に可決されました。2022年知的財産(改正)法(「改正法」)が2022年5月26日にシンガポールにおいて施行されることになります。改正法は、特許、商標、登録意匠及び植物品種保護の手続き及び手数料の変更点をまとめています。ここでは、シンガポールにおいて特許出願するための手続き及び庁費用の主な変更点を要約します。
シンガポール知的財産局(「IPOS」)が2021年知的財産(「IP」)(改正)法案(「法案」)を提案したことを以前ご報告しましたが、この法案が2022年1月12日に可決されました。2022年知的財産(改正)法(「改正法」)が2022年5月26日にシンガポールにおいて施行されることになります。改正法は、特許、商標、登録意匠及び植物品種保護の手続き及び手数料の変更点をまとめています。ここでは、シンガポールにおいて特許出願するための手続き及び庁費用の主な変更点を要約します。
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マレーシア2022年新特許[改正]法
マレーシア知的財産公社(MyIPO)は2022年3月18日施行の2022年特許(改正)法を公示しました。改正部分は(公衆衛生に関する)TRIPS協定、地域的な包括的経済連携協定(Regional Comprehensive Economic Partnership Agreement(RCEP))および環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership(CPTPP))におけるマレーシアの公約ならびに特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of the Patent Procedure)の規定に従う公約を考慮したものです。
マレーシア知的財産公社(MyIPO)は2022年3月18日施行の2022年特許(改正)法を公示しました。改正部分は(公衆衛生に関する)TRIPS協定、地域的な包括的経済連携協定(Regional Comprehensive Economic Partnership Agreement(RCEP))および環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership(CPTPP))におけるマレーシアの公約ならびに特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit...
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シンガポールにおける特許付与前第三者情報提供および特許付与後再審査の正式手続き
シンガポール知的財産庁(IPOS)は、最近シンガポール特許法および規則の一部改正を導入し、それらは2021年10月1日に施行されました。以下に要約するように、これらの改正は主にシンガポールの特許制度の紛争解決プロセスの強化を重視しています。
シンガポール知的財産庁(IPOS)は、最近シンガポール特許法および規則の一部改正を導入し、それらは2021年10月1日に施行されました。以下に要約するように、これらの改正は主にシンガポールの特許制度の紛争解決プロセスの強化を重視しています。
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インドネシアにおける特許付与後異議申立手続き
インドネシアでは、第三者が特許審判委員会に対し特許付与後の異議申立の請求をすることができます。委員会は特許庁の一部ではなく、法務省所管の独立した委員会です。
インドネシアでは、第三者が特許審判委員会に対し特許付与後の異議申立の請求をすることができます。委員会は特許庁の一部ではなく、法務省所管の独立した委員会です。
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シンガポールにおける特許期間の延長
シンガポールは現在、東南アジア地域で特許期間の延長(PTE)が少なくとも理論上は可能である唯一の国となっています。ただし、実際には、付与された特許の期間を延長するために満たす必要がある条件が厳しいことから、PTEが実施されることはほとんどありません。
シンガポールは現在、東南アジア地域で特許期間の延長(PTE)が少なくとも理論上は可能である唯一の国となっています。ただし、実際には、付与された特許の期間を延長するために満たす必要がある条件が厳しいことから、PTEが実施されることはほとんどありません。
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フィリピンにおける既知の医薬物質の特許性
フィリピン知的財産法によると、医薬物質に関連して、以下に挙げるものは特許の対象ではなく、発明の進歩性を有しません。
フィリピン知的財産法によると、医薬物質に関連して、以下に挙げるものは特許の対象ではなく、発明の進歩性を有しません。
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