中国 | 特許審査の新しいトレンドか。特許審査ガイドラインの改正案

この記事は最初に2025年5月14日に英語で公開されました

現行のガイドラインが施行されてから15か月経過した2025年4月30日、国家知識産権局(CNIPA)は、特許審査ガイドラインの改正案を発表しました。提案された改正に対するパブリックコメントの募集も行っています。

提案された改正案は、手続事項、二重出願アプローチ、無効審判の請求人、植物品種、進歩性の評価および特許期間延長(PTA)シナリオを含む、ガイドラインの様々な側面を包含しています。改正案はまた、ビットストリーム/AI関連の発明にも焦点を当てています。

提案された変更点を以下に要約し、これが特許権者および出願人に対して何を意味するのかを考察します。

発明者の識別情報および特許代理人の責任

  1. 出願の時点で、全ての発明者の身元情報(氏名、国籍、および中国人の場合にはIDカード番号を含む)を願書様式に記入することが求められます。
  2. 特許代理人は、出願人および発明者の身元情報、ならびに記入された連絡先情報の真正性および有効性に対して責任を負うことになります。

二重出願アプローチ

出願人が、発明特許および類似する実用新案を同日に、互いを参照して出願した場合で、発明特許出願が特許査定されることになった際、出願人は、発明特許の取得を目的として実用新案を放棄し、二重特許を回避するように選択することができます。そうしなければ、発明特許出願は拒絶されます。

今回の変更により、対応する実用新案によって包含される範囲とは異なるようにするために、発明出願のクレームを補正する二重出願戦略の選択肢が、今後許容されなくなります

二重出願戦略による発明特許が付与され、対応する実用新案が放棄される場合、発明特許は、現在の実務ではPTAの対象にはならないことに留意が必要です。

超過ページ費用

XML形式で提出されたST.26に準拠した配列表に対して、超過ページ費用は今後生じなくなります。これにより、配列表を伴うバイオ系の出願については、超過ページに対する超費用が減額されます。このことは、場合により、出願人の費用負担を大幅に軽減します。

無効審判の請求人としての適格性

無効審判の請求が、請求人によって示される真意に基づいていない場合、無効審判の請求は、受け入れられません。

今回の改正案では、第4次の中国特許法および実施規則における誠実性および信頼性に関する規定がさらに強化されるようです。無効手続において「名義人(いわゆるストローマン)」の選択肢をとる者に対して直接的な影響がある可能性があります。しかしながら、「真意」の判断基準については、まだ明らかになっていません。

費用の返還

以下の状況の場合、CNIPAは、今後、自動的には費用返還を行わなくなりますが、当事者は、返還の請求を開始することができます。

  1. 実体審査開始通知が発行される前に中国特許出願が取下げられるか、またはに取下げとみなされた場合、審査費用は全額返還されます。
  2. 特許権が消滅した後、または特許権を全面的に無効とする決定が通知された後に支払われた年金。
  3. CNIPAが回復請求を拒絶する決定をした場合の回復費用および関係費用。

早期審査

地域の知的財産保護センターまたは迅速知的財産権サービスセンター(fast IPR service center)による予備審査を通過した中国特許出願は、CNIPAによる早期審査の対象となる場合があります。

特許の予備審査は、CNIPAへの正規出願の前に早期審査を請求する特許出願に対して、地域の知的財産保護センターが提供するサービスです。

出願人は、関連する産業および地域の要件を満たす企業または機関である必要があり、かつ事前に地域の知的財産保護センターに登録する必要があります。出願は、地域の知的財産保護センターが予備審査として受け付ける技術分野に含まれる必要があります。

特許証に記録される、出願時点での出願人および発明者の詳細

国内移行の出願および分割出願において、特許証に記録される出願人および発明者/創作者の氏名は、国内移行された時点または分割出願時点で提供された氏名である必要があります。

再審査手続中に生じる合理的な遅延

再審査手続中の合理的な遅延としては、再審査手続中に、出願書類の補正、または新たな論点および/もしくは新たな証拠の提出によって、最終的な拒絶査定決定が取り消される場合が挙げられます。

再審査における新たな論点、新たな証拠および/または出願書類の補正に基づいて拒絶査定決定が取り消される場合、補償期間の算出にあたっては、その再審査に要した時間もさらに除外されることになります。後者の2つは容易に判断できるのに対し、新たな論点の基準についてはさらなる説明が必要になるでしょう。出願人が同じ視点を別の言葉で説明する場合はどうなのでしょうか。

植物および植物品種

  1. 特許を受けることのできない「植物品種」の定義が、識別性、一様性および安定性を有する植物群へと変更されます。このことは、当該植物群が、他の植物群から識別可能であり、繁殖後でも一貫した形態的および生物学的特徴ならびに安定的な遺伝形質を維持することを意味します。
  2. 科学的発見に属する植物が明確化されます。特許法第25条1(1)に規定されるように、自然界で発見され、技術的に加工されていない野生植物は科学的発見に該当し、特許権の付与はできません。しかしながら、産業上の価値を有するように人工的に交配されるかまたは改変された野生植物は、科学的発見のカテゴリーに含まれません。さらに、そのような植物およびそれらの繁殖体が識別性、一様性および安定性を有しない場合は、それらは、第25条1(4)に規定されるような特許を受けることのできない「植物品種」には該当しません。したがって、革新的技術の成果を反映する中間体の交配は、特許保護の対象となりえます。
  3. 組換えDNA技術などの生物学的手法により生産された遺伝子組換え植物は、もし、それらが上記で定義したような特許性のない「植物品種」の定義に合致するならば、特許性はありません。

発明性の評価

あるクレームによって解決されるべき技術的課題を解決する際に、この解決に寄与しない特徴は通常、クレーム内に導入されていたとしても、進歩性を付与しません

例:

カメラの発明の場合で、発明によって解決されるべき技術的課題が、より柔軟なシャッターコントロールの実現であるとします。この技術的課題は、カメラ内部の関連する機械的および回路構造を改善することによって達成されるとします。審査官が指摘する進歩性に関する拒絶理由に対処するために、出願人は、カメラの筐体の形状、ディスプレイのスクリーンのサイズ、およびバッテリーコンパートメントの位置を含む特徴を、クレームに含めました。しかしながら、明細書では、新たに追加された特徴が技術的課題の解決とどのように関連するのか記述がありません。出願人はまた、これらの特徴が、クレームされた技術的解決策に対して、どのようなさらなる技術的効果をもたらし得るのかを証明する証拠も提供しませんでした。したがって、上記の技術的特徴は、技術的課題の解決に対して寄与せず、クレームされた技術的解決策に進歩性をもたらさないであろうとなります。

上記では、ガイドラインの改正案の主要な改正点を要約しておりますが、ビットストリーム/AI関連の発明の審査に関する変更点は考察されていません。この点に関しましては、近いうちに、弊所の次の記事にて詳細に考察する予定です。

弊所ができるお手伝い

中華圏および東南アジア全域にわたる弊所のチームは、担当地域の規則および要件に関するスペシャリストであり、国ごとの違いにも精通しております。世界中のお客様が首尾よく特許取得を行えるように、特許明細書が正しい中国語の技術用語を用いて翻訳されることを保証することから、CNIPAおよび必要ならばその他当局においてお客様の代弁をお手伝いすることまでご支援いたします。Siqiおよび彼女のチームまでお問い合わせください。弊所の戦略的アドバイスが、中国での知財取得の成功にどのように貢献できるかご紹介いたします。


弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。

日本語のお問い合わせを直接 [email protected] 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。

出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。

Back to Articles

Contact our Expert Team

Contact Us