中国最高裁判所による画期的なIP判決

この記事は最初に2024年8月14日に英語で公開されました

中華人民共和国の最高裁判所は最近、周知の2つの国内自動車企業である極グループと微グループとの間の新エネルギー車シャーシ技術に関する特許および技術機密に関わる論争を含む上訴事件[1] の判決を発表しました。

この事件は、短期間に40名近い従業員が極グループから微グループへ転職したことによって引き起こされました。上級管理職および技術職を含むこれらの従業員は、極グループで新エネルギー車シャーシ技術の技術機密へのアクセスを有していました。転職により移動した後、彼らは微グループでの雇用下でこれらの機密を利用しました。さらに、微グループは、これらの技術機密を用いて12件の実用新案を出願し、付与されました。

極グループは、微グループに対する訴訟を起こし、他の訴因とともにとりわけ自社の技術機密の侵害を主張しました。第一審の裁判所は、極グループに有利に裁決し、微グループの責任を認め、12件の実用新案権を極グループに返還し、かつ経済損失分として500万人民元(約692,521米ドル)および権利保護においてかかった合理的費用分として200万人民元(約277,008米ドル)を極グループに補償するよう微グループに命じました。この第一審の判決を不服として極グループは、最高裁判所に上訴しました。

最高裁判所は、極グループに与えられる補償を顕著に増額し、微グループに対して実質的な懲罰的損失を課しました。最高裁判所は、微グループの侵害の悪質性、大規模および重大な結果、ならびに侵害継続および損失拡大の可能性を考慮すると、微グループの侵害挙動の包括的かつ効果的な防止を確実にする実用的、効果的かつ合理的に実行可能な手段を講じることが必要であると裁決しました。

中国最高裁判所の審判

極グループ対微グループにおける最高裁判所の審判の重要な側面は、以下を含みます。

  1. 実際の損害分の補償に加えて、この審判は、2倍の懲罰的賠償と原告の権利保護のための合理的な費用とを課し、結果的に640,000,000人民元(約88,047,546米ドル)の総補償額となりました。これは、中国におけるIP関連訴訟において付与された最も高額な補償です。
  2. 微グループはいかなる方法でも12件の特許を実施してはならず、12件の特許が将来、請求に応じて正当な所有者である極グループに有効なまま返還されることを確実にしなければなりません。
  3. 非遵守を理由とする特定の懲罰

中国におけるIP保護の意味

IP侵害に関するこの訴訟における最高裁判所の判決は、広範な注目を集め、特に以下の側面において、中国でのIP保護に対して確実に遠大な影響を及ぼすでしょう。

  • 侵害を防ぐ包括的な方策
    さらなる侵害を防ぐための最高裁判所の詳細な方策には、技術機密の使用停止、実用新案権の正当性および正当な所有者への最終的な返還を確実にし、非遵守に対する顕著な財務懲罰を課すことを含みます。
  • 司法執行の強化
    遵守遅延を理由とする毎日の上乗せ科料および承認されていない特許の処分に対する重い一回限りの罰金との導入は、知的財産権の施行への司法関与の強化を示しています。
  • 企業行動にとっての意味
    この画期的な審判は、企業に対して知的財産窃盗の重大な結果について明確なメッセージを送ります。それは、倫理的なビジネス習慣の重要性と営業上の秘密および専有技術を保護する確実な管理方法の必要性とを浮き彫りにします。
  • イノベーションおよび競争への影響
    知的財産侵害に対して厳格な懲罰を課すことにより、この審判は、産業界における公正な競争とイノベーションとを奨励します。企業は競争力を得るために不正な手段に頼るのではなく、独自の研究開発に投資するよう奨励されます。
  • 法的な先例および指針
    この事件は、今後の知的財産権紛争において価値ある法的先例として役に立つでしょう。損害額の計算、懲罰的損害賠償の適用および非金銭義務の執行について今後類似の事件において参照することができる明確な指針を提供しました。

弊所がお手伝いできること

香港および北京における弊所のチームは、法的保護の仕組みを強化するために近年著しい歩みを進めた中国におけるお客様のIP権利を保護するとともに守ることをお手伝いします。

特に海外のお客様のために、弊所は、なじみの薄い可能性がある方式に関する問題を軽減し、審査官とも積極的に連絡を取るなどして特許出願プロセスを合理化しています。

中国におけるお客様のIPを保護する際の助言または支援につきましては Siqi Wang または弊所チームにご連絡ください。


  1. (2003) ズイ・ガオ・ファ・ジー・ミン・ジョン(Zui Gao Fa Zhi Min Zhong) No.1590(2023)最高人民法院第1590号 ↩︎

弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。

日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。

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