04 April, 2016
Spruson

オーストラリア:単離された核酸の特許適格性を否定するMyriad事件最高裁判決、および新審査ガイドライン

オーストラリア:単離された核酸の特許適格性を否定するMyriad事件最高裁判決、および新審査ガイドライン

最高裁判決

オーストラリア最高裁(the High Court)は2015年10月7日、D'Arcy v. Myriad Genetics Inc & Anor [2015] HCA 35 (Myriad事件)において、単離された核酸はオーストラリア特許法の保護対象とはならないとの判決を下しました(判決文全文はこちら)。

本 事件の第二審では、5名の裁判官による合議審(the Full Federal Court)により、Myriad Genetics社(以下、Myriad)の単離された遺伝物質に関する特許権を維持する旨の全員一致の判決がなされました。その後、「単離された核酸 が、オーストラリア特許法第18条(1)(a)に特許要件として規定されるところの、the Statute of Monopolies法第6条に定義されるmanner of manufactureにあたる(特許保護対象となり得る)とした合議審は誤りである」との主張に基づき最高裁へ上告する特別許可が、原告のMs D’Arcyに与えられました。 (本事件のこれまでの経過については201495および2015213の記事を参照ください。)

2015616日の記事で もご紹介したとおり、最高裁判決は、審議対象とされた請 求項の特許適格性のみを審議した模様です。審議対象とされた請求項は、相補的DNA(cDNA)を含む単離された核酸を定義するものでした。最高裁の判決 の結論は全員一致でしたが、裁判官によって異なる見解を反映した三通の判決文が書かれ、その中で過半数の裁判官が、「遺伝子特許全般を考慮するものではな く、当該特許(Myriad社のオーストラリア特許第686004号)の請求項1−3に定義される発明が、これまで確立されてきたmanner of manufactureの範疇にあるか否かを考慮するものである」と述べています。

manner of manufacture(製造の態様)とは、英国の専売条約(1623年)から受け継がれてきた用語で、オーストラリア特許法の保護対象となりうる発明を 定義する概念です。National Research Development Corporation v Commissioner of Patents (NRDC事件)において最高裁は、manner of manufactureの要件を満たすためには、請求項発明が、「経済的に有用な分野において、人工的に創造された状態(artificially created state of affairs)を生じさせる」ことが要求されると判示しました。

今回の最高裁判決では、単離された核酸が「人工的に創造された状態」を生じさせるか否かが焦点となりました。この点について、過半数の裁判官(French裁判長、Keiel、Bell、Keane各裁判官)が次のように述べて判決の基調を定めました:

「専 売条約第6条より理解されるように、発明とは創造(making)を伴うものである。発明はなんらかのものの上に存するものである。そのものは、生産物の 場合や、製造方法の場合がある。あるいは、NRDC事件の判例でいうところの「人工的に創造された状態」である結果物の場合もある。いずれにせよ、発明 は、人間の行為により、もたらされたものでなければならない。(本特許の)各請求項は、単離された(核酸)の塩基配列が特定の異変または多型を有すること を定義しているが、それによりこれらの請求項は同一の問題点を異なる形で提起している。ある核酸が請求項に定義された特徴を満たすか否かはその核酸を単離 する元のヒトの特徴に依存し、その特徴は、ヒト全てには当てはまらない特徴である。(技術的範囲に属するか否かは)異変を含む核酸の単離を行う者には何ら 関係がない。」

最高裁判決に関する記事の全文はこちらからご覧下さい(英文)。

特許庁:新審査ガイドライン

Myriad事件の最高裁判決を受け、オーストラリア特許庁が審査ガイドラインを発表しました。

審査ガイドラインの全文はこちら からご覧になれます。本審査ガイドラインは、現在、審査係属中の出願より適用され、2016年1月11日より審査官マニュアルに反映されます。

本審査ガイドラインの発表に先立ち、核酸の特許適格性に関する多数のパブリックコメントがオーストラリア特許庁に提出され、検討されましたが、最高裁判決の比較的厳しい特許適格性要件が踏襲されることとなりました。

天然に発生するDNA、RNAを単離したものは、ヒトであるか否か、コーディング/ノンコーディングに関わらず、全てが特許保護対象から除外されます。

合成核酸(cDNAを含む)、プローブ、プライマー、および単離された干渉性/抑制性核酸については、「天然に発生する生物の遺伝子情報を単に複製する」ものである場合にのみ、特許保護対象から除外されます。

本最高裁判決に関連する可能性はあるものの審査ガイドラインにより明示的に特許保護対象から除外されていない種類の発明については、以下の要素が考慮され、事案ごとに判断がなされます:

  • 請求項発明の形式ではなく、実体(substance)は何か
  • 請求項発明の実体は、人間により作られたあるいは改変(made or changed by man)されたもの、人工的(artificial)なものであるか
  • その発明には経済的有用性があるか
  • 請求項発明は、新たな種類(new class)の発明であるか

上記の各要素は審査ガイドライン中に詳細に説明されています。しかしながら、特許法が改正されていない現時点においては、Myriad事件の最高裁判決が及ぼす影響は、今後の判例に委ねられます。

一方で、審査ガイドラインでは、以下の発明が引き続き特許保護対象となることが明示されています:

  • 組み換えタンパク質、単離されたタンパク質
  • 医薬品、およびその他の化学物質
  • 治療方法
  • 除草剤の使用方法
  • コンピュータ技術の適用発明

審査ガイドラインに関する本記事の全文はこちらからご覧下さい(英文)。


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