23 January, 2015
Spruson

インド特許庁からまたの打撃-既知の物質の新規な形態は第3条(d)において発明ではない

インド特許庁からまたの打撃-既知の物質の新規な形態は第3条(d)において発明ではない

最近の判決で、インド特許庁は出願人Gilead社によるC型肝炎ワクチンおよびその製造法(出願番号 6087/DELNP/2005)に関する特許の出願を拒絶しました。クレームの内容に新規性および進歩性があると認められたにも関わらず、拒絶されたのはクレームの内容がインド特許法第3条(d)において発明ではないという理由からでした。

この判決は、本出願の審査過程で挙げられたいくつかの拒絶理由に対して疑問を生みます。中でもインド特許法第3条(d)に基づいた拒絶理由は興味深いものです。

第3条(d)の背景

インド特許法第 3 条は、『発明でないもの』を規定しています。中でも第3条(d)によると:

『既知の物質 の新規な形態の単なる発見であり、その新規な形態がその既知の物質の既知の効能と比較して、増大した効能を有さないもの、又は既知の物質の新規特性あるいは新規用途の単なる発見、既知の方法、機械、もしくは装置の単なる用途の単なる発見にすぎないもの。ただし、かかる既知の方法が新規な製品を作り出すことになるか、又は少なくとも1個の新規な反応物を使用 する場合は、この限りでない。

説明:本号の適用上、塩、エステル、エーテル、多形体、代謝物質、純形態、粒径、異性体、異性体混合物、錯体、配合物およびその他の既知の物質の誘導体は、効能に関する特性が実質的に異ならない限り、同じ物質とする。』

第3条(d)はインド特許法が2005年に改正された時に導入された規定で、既知の物質の微小な改善による特許取得を妨げる意図があります。医薬組成品に関する特許などがわずかな修正のみで何度も何度も出願され、基礎特許の保護期間20年を上回る特許保護を受けるのを防ぐ狙いがありました。

不当な特許保護を防ぐために、上記の第3条(d)で強調されている通り、既知の物質の新規な形態は増大した効能を有さない限り、特許可能な発明とはみなされません。

インド高等裁判所による、記憶に残る過去の判決、Novartis A.G. vs. Union of India & Othersでは、インド最高裁判所が第3条(d)に基づき、Novartis Gleevec/Glivecの特許出願のメシル酸イマチニブ (Imatinib mesylate) のベータ結晶体は第3条(d)で必要とされる増大した効能を有さない、として出願を拒絶しました。

この判決に対して、Novartis社はメシル酸イマチニブはイマチニブ(Imatinib)と比較して生物学的利用性が30%増加するため増大した効能がある、とインド最高裁判所で反論しました。Novartis社は更にメシル酸イマチニブは流動性、熱力学安定性そして吸湿性などの理化学的性質が優れていることも証明しました。

しかし、この審理において、どのようなデータを提示すれば『増大した効能』が確立できるのかの議論は法廷ではなされず、医学辞書の定義にのみ基づき『効能』は『治療有効性』であると解釈されました。よって、Novartis社のメシル酸イマチニブの優れた特性についての反論は、『治療有効性』の増大を証明しないとして、裁判所により拒絶されました。

Gilead社による本出願においては、次席特許審査管理官は上記の最高裁判所の過去の判決を念頭に入れ、本出願で請求されているC型肝炎ワクチンは既知の物質の単なる立体異性体であるため、増大した『治療有効性』を示さなければならないと主張しました。

Gilead社は請求されているC型肝炎ワクチンは他のC型肝炎の治療薬と比べて、細胞毒性が低いにも関わらず、C型肝炎を治療する能力は損なわれていないことを示す比較データを提示しました。問題はこのようなデータが、増大した「治療有効性」を証明するのに十分か否かということです。

前回のNovartis A.G. vs. Union of India & Othersの件では、請求された物質の生物学的利用性の増加は増大した治療有効性との関連性がないとして、生物学的利用性の増加を示したデータがインド最高裁判所により拒絶されました。

最高裁判所による指針、そして次席特許審査管理官によるGilead社の実験データに対する理解を考慮すれば、Gilead社の出願も前回の判決に乗っ取り拒絶されるだろうというのは想像に難しくありません。細胞毒性の低下は増大した治療有効性との関連性がないため、増大した治療有効性を証明するには不十分であろうからです。

しかし、しばしば悪魔は判決の詳細に潜んでいるものです。まず第1に、インド特許庁の過去の判決によると、細胞毒性の低下は治療有効性を見極めるために実際に考慮されるべき要素なのです(例:106/DELNP/2008および413/MUM/2003)。第2に、Gilead社の出願を拒絶する判決には次の通りに記述されています:

「治療有効性は効能に関する特性が実質的に異なることを証明する臨床治験などで証明されうる。[Gilead社により提示された]データには治療有効性の増大を証明する臨床治験がなかった」

Gilead社の出願を拒絶する判決には上記のどの点が実際に拒絶理由となったのかが明記されていません。インド特許出願の出願人としては、今後の審査過程において、治療有効性の増大を証明するために臨床治験のデータ提示が必須とならないことを願うばかりです。実際、第3条(d)には治療有効性の増大を証明するためにどのような情報が必要なのかが定義されていません。Novartis A.G. vs. Union of India & Othersでは最高裁判所は動物実験の結果も治療有効性を示すのに適切であるだろうという見解を示しています。

更にGilead社の判決が下された後、様々な公開討論会において、Gilead社が提示したデータも拒絶理由となったのかが議論されました。Gilead社が提示したデータには、最も近い選考技術から引用された化合物との比較がなかったからです。残念ながら、判決にはこれに関する明確な答えは書いてありません。試験管内または非人体動物実験に対し、臨床治験が必須になるか否かの質問同様、治療有効性の増大が先行技術から引用された化合物と関連しなければいけない、というのはあまり説得力がありません。治療有効性の増大の示し方は他にも何通りもあるからです。

現時点では本出願がなぜ拒絶されたのか、そしてその拒絶は正当だったのか、更なる見識を得るためにも、Gilead社が判決に対して上訴することを願うばかりです。


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